久津輪 雅
専門分野 | 木工 |
---|---|
最終学歴 | 筑波大学第3学群 国際関係学類 |
研究テーマ | ・グリーンウッドワーク(生木を手道具で削る木工) ・伝統技術の継承、原材料・道具・人(後継者)の課題解決支援 ・古くからの木工文化の継承と、新しい木工文化の創造、そのための仕組みづくり |
経歴
1967年生まれ。福岡県出身。
1986年、筑波大学国際関係学類に入学。在学中1年間休学し、日本国際ボランティアセンターのボランティアとしてタイのインドシナ難民キャンプで働く。
1991年、NHKに入社。特に社会問題や災害復興等に関心を持ち、ディレクターとしてクローズアップ現代、NHKスペシャルなどの番組制作に従事。
1999年、NHKを退社し、岐阜県高山市の森林たくみ塾にて木工を学ぶ。
2001年、イギリスに渡り家具職人として働く。はじめの2年半はイングランドの個人家具工房(James Winby Furniture)、その後半年間はウェールズの地域材を用いた家具デザイナーのスタジオ(David Colwell Design)、最後の2年間はスコットランドの森林保護財団が運営する家具工房(Borders Forest Trust / Woodschool)に勤務。職場を移りながら、より地域社会や環境に関わる木工に関心を深める。イギリス滞在中に、人力の道具で生木を加工する古くて新しい木工、グリーンウッドワークに出会い、第一人者のマイク・アボット Mike Abbott 氏に手ほどきを受ける。
2006年より岐阜県立森林文化アカデミー勤務。木工分野の教員として小物や家具制作を教えるとともにグリーンウッドワークを日本に紹介し、普及に努める。「木のものづくりの新しい可能性の開拓」をテーマに、林業、環境教育、地域づくり、福祉などさまざまな分野と連携して活動を行う。
2008年・2010年、アメリカのグリーンウッドワークの第一人者、ドリュー・ランズナー Drew Langsner 氏を森林文化アカデミーに招き、椅子づくり講座を開催。
2010年より、後継者のいなかった長良川の鵜飼道具をはじめとする竹細工技術の継承に着手。関市の最後の鵜籠職人と言われた石原文雄氏の指導を受け、森林文化アカデミー卒業生とともに技術の継承に携わる(現在は卒業生が技術を継承し美濃市内に工房を開設)。
2012年より、岐阜和傘の材料確保や人材育成の支援を開始。和傘づくりに欠かせないエゴノキを、美濃市の林業グループ、和傘職人、森林文化アカデミーの三者が協力して収穫・育成する「エゴノキプロジェクト」を行う(現在も継続中)。
2013年、卒業生の鬼頭伸一さんとともにイギリスの籠細工の祭典「Basketry and Beyond Festival 2013」に招聘され、展覧会に長良川の鵜籠を出品し、現地で2日間の竹細工講座を実施。
2014年より、日本全国で失われつつある和船の技術を残し、情報を共有するため、メーリングリスト「和船ネットワーク」を設立。
2016年、森林文化アカデミーにて、グリーンウッドワーク指導者養成講座を開始(継続中)。
2016年、書籍『ゴッホの椅子』出版(誠文堂新光社刊)。
2016年、スウェーデンの木工の祭典・テアリフェス Taljfest に日本から初めて参加。パネルディスカッションに登壇。
2017年、長良川鵜飼の鵜飼舟づくりの技術を記録するため「鵜飼舟プロジェクト」を東京文化財研究所と共同で主催。森林文化アカデミーに、美濃市の舟大工・那須清一氏、アメリカ人舟大工ダグラス・ブルックス氏を迎え、鵜飼舟一艘を製造、技術を記録した。
2017年・2019年、日本で初めてグリーンウッドワークのスプーンづくりの祭典「さじフェス」を主催。
2018年、イギリスのスプーンづくりの祭典 ・スプーンフェス Spoonfest に日本から初めて参加。
2018年より、DIY雑誌『ドゥーパ』にグリーンウッドワークを紹介する記事「Greenwood Work & Life」を連載(2023年10月号まで5年間)。
2018年・2019年、アメリカのグリーンウッドワーカー、ジャロッド・ダール Jarrod Dahl 氏を森林文化アカデミーに招き、5日間のグリーンウッドワーク講座を開催。
2018年・2019年、北海道で行われた、モーラナイフ・アドベンチャー Morakniv Adventure にて、スウェーデンの木工家、ヨッゲ・スンクヴィスト Jogge Sundqvist 氏の通訳・アシスタントを務める。
2019年、アメリカのノースハウス工芸学校に招聘され、京都の木工芸家・森口信一氏と我谷盆づくりの講座を開催。
2019年、日本で初めてのグリーンウッドワークのテキスト、『グリーンウッドワーク』を出版(学研プラス刊)。
2019年、グリーンウッドワークや手工芸の優れた担い手に贈られるヴィッレ・スンクヴィスト=ビル・コパーズウェイト工芸奨励賞を受賞(世界で8番目、欧米以外からは初)。
2019年、アメリカ・ポートタウンセンドで開催されたWooden Boat Festivalに招聘され、鵜飼舟プロジェクトについての講演を行う。
2020年、林業、木工、木造建築などの道具を作る全国の鍛冶職人の現状や課題を調査する「匠の道具保存伝承プロジェクト」を開始。中間報告として「鍛冶フェス」を開催。
2021年、卒業生の大滝絢香さん、調査員の杉田悠羽さん・西禎恒さんとともに「匠の道具保存伝承プロジェクト」の中間報告書、「森林文化を支える鍛冶・部品職人データブック2019-2020 」を発行。
2022年・2023年、全国の彫刻刃物鍛冶職人に聞き取り調査。「彫刻刃物の技術継承を考える車座集会」を高山市で開催し、結果を報告。
2023年、アメリカのWoodspirit School of Traditional Craftに招聘され、長野県松本市の木工家・大久保公太郎氏の南京鉋講座の通訳・アシスタントを務める。
(経歴のエピソードを20周年記念インタビュー記事で公開しています!)
専門分野に対する思い
「主にものづくり講座の学生に、手工具と機械を使った木工全般を指導しています。
森林文化アカデミーには、さまざまな経歴を持った人が集います。年齢は20代前半から60代まで。木工技術を学ぶには若いに越したことはないのですが、私はここに来るまでの経歴も『木工+α』の技術だと捉えています。私自身も20代は報道番組制作に携わってきましたが、そこで培った社会を見る眼、人に分かりやすく伝える技術は、現在の仕事に欠かせないものです。
いま木工の現場では、材料となる広葉樹の枯渇、安価な輸入品との競争、国内市場の縮小、伝統技術の後継者不足など、さまざまな問題を抱えています。この分野で生きていくためには、ものを作る技術に加え、各人が持つ『+α』の技術で社会に新しい提案をしていくことが求められます。そんな、やる気ある学生達と出会えるのを、毎年楽しみにしています。特に、私がテーマとする『木のものづくりの新しい可能性の開拓』『古くから文化や技術の継承』に一緒に取り組んでくれる人、募集中です!」
木工を仕事にしたいと考えている人へのメッセージ
趣味
伝統的な工芸や芸能を見て歩くのが趣味です(ほとんど仕事と同じ?)。豊かな森林資源を使ったものづくりがあり、建築があり、地歌舞伎や文楽などの芸能もあり、見ていて飽きません。古いものを見ることが、新しいものづくりのヒントにもなっています。