皆伐によるシデコブシの萌芽更新に関する研究

2011年から岐阜県多治見市のシデコブシ自生地で皆伐によるシデコブシの萌芽更新を促進するプロジェクトを市民と多治見市と共同で進めています。

シデコブシはモクレン科の樹木で,東海地方に固有に分布する絶滅危惧種です。里山に人手が加わらなくなったことにより植生遷移が進み,多くの自生地で更新がうまく行っていないという現状があります。そこでこのプロジェクトでは,シデコブシ自生地でシデコブシを含む樹木を全て伐採(皆伐)し,萌芽更新を促すことにしました。

絶滅危惧種を伐ってしまうという,一見乱暴に見えるこの方法ですが,シデコブシは里山の樹木なので,昔は他の里山の樹木と一緒に燃料目的で伐採されていました。一方,シデコブシだけを残すというやり方もありますが,そうするとそこはシデコブシだけの林になってしまいます。シデコブシも含む生態系を保全するためには,シデコブシも他の樹木と区別せずに伐採してしまうのが適切です。

120228tajimi写真は2012年1月に伐採した直後の状態です。

120614shidekobushi翌春には萌芽が発生しました。

140331shidekobushiまた,3年目の2014年の春には萌芽再生した個体が初めて開花しました。

当初は萌芽更新のみを期待していたのですが,皆伐して光環境が大きく改善されたおかげで,大量の埋土種子が発芽し実生更新も起きています。

現在はこれらの萌芽や実生がどのように成長していくのかのモニタリングを進めています。

これまでにこのプロジェクトに関連して以下の2報の論文を出版しています。

  • Tamaki I, Nomura K, Nomura R, Tate C, Ogiso M, Miyakami Y, Yabe Y (2015) Seedling survival and growth during the 2 years following seed germination of Magnolia stellata, a threatened subcanopy tree, after clearcutting. Journal of Forest Research 20:415-419 LINK
  • 玉木一郎・野村勝重・野村礼子・楯千江子・小木曽未佳・宮上佳弘 (2014) シデコブシ自生地の皆伐後1年目の萌芽・実生更新. 日本森林学会誌 96: 193-199 LINK