グリーンウッドワーク指導者養成講座2020 過去の参加者の声をご紹介します②
グリーンウッドワーク指導者養成講座、2018年の参加者のみなさんからいただいたコメントの第2弾です。建築の専門学校の先生、森林の研究者、プロの木工家、本当に幅広いジャンルの方々がグリーンウッドワークでつながりました。今年度の講座は引き続き、6月26日(金)までお申し込みを受け付けています。
荒井圭一郎さん 大阪工業技術専門学校 教員
建築系専門学校に勤務する私は、「若者のものづくり離れ」について考える過程で、グリーンウッドワークと出会いました。
当初、私が養成講座に参加したのは、グリーンウッドワークという「技術」を学生と共に楽しむ為という目的でした。しかし、受講後の私にとって「グリーンウッドワーク」は「活動」となり、多様な分野の人々とその「活動」を共有することでその可能性は深まるという奥の深いものに変わっていきました。
それは、もちろん受講期間中の久津輪さんはじめスタッフの皆さんの献身的なコーディネートにあると思うのですが、他の受講者の方と寝食を共にしながら、森林のコト、環境のコト、仕事のコト、生き方のコト、教育のコト、伝統技術や文化の伝承のコトなどを熱く語り合った次の日に「削る」という濃い2日間を数回過ごせたことが大きく影響しているとも考えています。
指導者養成講座終了後は、当初の目的であった、勤務する学校の学生に対して、「サークル」というカタチでグリーンウッドワークという活動を伝えるということを昨年度から始めました。いずれは、都市部の学生を日常的に「山」と繋げることを目標にしています。
最後に、このコロナ禍の状況により、教育の世界は「一方的に与える」から「支える」「繋げる」へと以前にも増して転換を求められています。グリーンウッドワーク指導者養成講座は、まさに「個別で学び」「学びを仲間と共有し」「各プロジェクトを達成する!!」を支え、繋げるという、アフターコロナに求められる教育のカタチを先取りした講座でありました!!
倉本 惠生さん 森林総合研究所・植生管理研究室長
私は森林・林業の研究の仕事をしています。職場の森林総合研究所は北海道から九州まで各地に部署があり、木や生き物、林業、木材にわたる森林の様々な分野を研究しています。私は樹木と森林の植物、それらが形作る集団である森林の研究を専門にしています。
ふだんは森に入って木を調べていますが、そのために木を伐ることはあっても、木を使ってものを作ることはほぼしたことがありません。木工に使うのは大きくてまっすぐな広葉樹の材と思っていたので、雑木を伐ってそのまま木工をするときいて、これは面白そうだし自分にもできそうだと思って参加しました。それに漠然とではありますが、仕事にも関わるかなと思いました。研究所には樹木園や研究のための林があって、施設公開や見学のときに案内や説明をよくします。こうした案内や研究成果を伝える場面で、幅が広がると期待しました。
ただ最初は正直偉いところにきてしまったと思いました。木工がずぶの素人で、ついていくのに必死でした。でも木工作家さん、様々な木のプロの方たちが、熱心に講師の方たちの話を聞き、新しい技法を学び取ろうとする姿に教えられました。そこから開き直って、いろんな木を割って削るのに夢中になりました。無心に削ると思いきや、むしろ削りながら森林のことや林業のこと、研究のことをいろいろ考えていましたね。この講座では気づきや学びが多かったからです。森に生えている木のことはいっぱしに知っているつもりでしたが、これはこんなに固いのかとかこれはこんなにしなやかなのかとか、自分の感覚で木を新たに知ることができました。こうした経験を私が森や木のことを皆さんに伝えるときに活かしていくつもりです。
さらにこの講座で学んだことがあります。この講座のように、森林・林業のところでも様々な人材の養成が取り組まれていて、私も養成研修に教え役・説明役で関わっています。そこでは例えば森の様々な働き・恵みについて研究結果も取り入れながら話をします。科学的な森の見方は重要ですが、数字やグラフだけで教室の中だけで伝えるのは大変です。そこには、様々な工夫が要ります。
久津輪さんをはじめこの講座の教え手のみなさんは、伝え方や教え方に個性があって、とても参考になりました。この点で、私のなかではスプーンが未完成のデコボコであっても、毎回何かを学んだという手ごたえがありました。私が森のプロの皆さんにお話をするときに、この講座で経験したこと、学んだことを取り入れてやっていきます。直接教え広めることではありませんが、森の専門家の一人としてグリーンウッドワーク(GW)のもつ考え方や可能性を伝えていきたいと思います。
実は、GWにはこれまでの林業や森林管理の見方・あり方を変える可能性があるのではないかと思っています。それを示すための研究にも取り組んでみたいと考えているところです。
さかいあつしさん 匙屋 主宰
長らく木の匙を作っています。
久津輪先生による学外ワークショップでゴッホの椅子(子供サイズ)作りに参加したのがグリーンウッドワークとの出会いでした。2泊3日の短い期間ながらグリーンウッドワークが様々な立場の人を惹きつけることにワクワクしたものです。その頃の私は、クラフト界の中だけで活動していることに何か違和感を感じていました。暮らしている地域で作家として関われることがもっとあるのではとも感じていましたので、指導者養成講座の募集を知った時はまたと無い機会!と申し込みました。
講座に向かう岐阜県までの道中の緊張感と帰りの高揚感、疲労感は記憶に鮮明です。講師の方々をはじめグリーンウッドワーカーの先駆者達が知識や技術を公開、共有していく情熱には受講早々に衝撃を受けました。
ひとつのナイフで幾種類もの握り方、削り方を教わっただけでも目からウロコでした。時には図鑑片手に森に出掛け、樹を見ました。時には同時代のグリーンウッドワーカーの活動に触れました。受講仲間の皆さんが多岐にわたる分野から参加していることからもうかがえるように、グリーンウッドワークが単に過去の木工文化、工法の掘り起こしではなく、とても現代的な課題に新たな意義と価値を提案していける手段だから多くの人を惹きつけているんだということがよく分かりました。作った物を供給するだけだった自身の製作活動を見直すことができた貴重な体験です。
養成講座修了後の現在は、教わったことをもう一度再現するべく環境を整備中です。住まい裏手の荒れた山が素材の宝庫だとわかりました。工房はワークショップができる広さの所へ移転しました。近所のオリーブ畑で間伐した枝を使って作品作りを始めました。近隣だけでもグリーンウッドワークの体験希望者が多数いることがわかりました。
あとは伝えるだけです。