4 生木を削る
グリーンウッドワークの魅力
グリーンウッドワークとは、身近な森で伐ったみずみずしい生木を、手道具で割ったり削ったりして暮らしの道具を作る木工のことです。greenwood=生木、woodwork=木工、だからグリーンウッドワーク。他にgreen=エコロジカルな木工、という意味もあります。いまグリーンウッドワークは世界的に人気で、日本でもファンが増え続けています。
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学内でのグリーンウッドワークの授業風景
人気の理由は、まず誰でもどこでも楽しめること。危険な機械を使わないので安全で、音も静かで、コンセントがなくても大丈夫です。
次に、身近な自然とダイレクトにつながれること。ホームセンターで角材や合板を買ってこなくても、近くの森の木や庭で切った枝などがそのままものづくりの素材になります。
そして、作ったものが毎日の生活で使えること。自分が作ったスプーンでデザートを食べると、嬉しくなります。そしてもっと美しく使いやすいものを作りたくなります。
森林文化アカデミーが果たしてきた役割
実は日本のグリーンウッドワーク・ブームを牽引してきたのは、森林文化アカデミーなのです。まだ国内でグリーンウッドワークという言葉が知られていなかった2006年から教育に導入。一般の人に使いやすいソフトもハードもなかったため、斧や削り馬などの道具を独自に開発。テキストも出版社から発行しました。
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森林文化アカデミーで開発した斧
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削り馬
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書籍『グリーンウッドワーク』久津輪 雅 著
授業の中でのグリーンウッドワーク
森林文化アカデミーに入学すると、まず「グリーンウッドワーク部」の部活動で生木を削る体験をすることになります。毎週1回、木工専攻の2年生の指導で、楽しみながらスプーンや箸を削ります。
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グリーンウッドワーク部の活動
1年次の秋には「グリーンウッドワーク(椅子)」の授業があります。丸太を割るところから始め、部材を加工し、組み立てて座面を編み、椅子を完成させるまで、すべての工程を手道具だけで行います。組んだ後に緩まないように、生木を乾かしながら作業を進めます。製作を通じて、材料や道具についての理解を深めます。
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学生が製作した椅子
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椅子が完成して浮き浮きする学生たち
2年次には、「グリーンウッドワーク指導実習」の授業があります。これは一般向けに開催される「グリーンウッドワーク指導者養成講座」(全11日間)の準備・運営・指導補助を行うものです。グリーンウッドワークの製作技術を学ぶだけでなく、講座運営の知識や技術を学ぶことができ、卒業後の実践的な活動に役立ちます。また、指導者をめざして全国から学びに来る参加者との人脈も築くことができます。
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グリーンウッドワーク指導者養成講座
社会からのニーズ
近年グリーンウッドワークは「森林環境教育」や「木育」のプログラムとして注目されていて、自治体や民間企業などさまざまな所から講座の実施依頼があります。最近の例では、高山市立清見中学校から、総合的な学習の時間を活用した連続授業「里山プロジェクト」で、生徒たちにグリーンウッドワーク体験をさせたいという依頼がありました。森や木の大切さを頭で学ぶだけでなく、五感を使って感じてほしいという願いからでした。このような依頼があると「プロジェクト授業」を立ち上げ、参加を希望する学生たちと企画を練るところから始め、講座を運営します。
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清見中学校の授業風景
世界とのつながり
森林文化アカデミーでは、海外の著名なグリーンウッドワーカーを招いた講座やイベントを数多く開催してきました。また、在学中に欧米のグリーンウッドワーク講座に参加した学生もいます。木工を通じて世界とつながりたい人は、森林文化アカデミーが持つネットワークを活かすことができます。
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学生にアドバイスするアメリカ人グリーンウッドワーカー、ジャロッド・ダールさん
卒業生の活躍
森林文化アカデミーの卒業生たちは、法人を立ち上げてグリーンウッドワークの全国的な普及に務めています。美濃市にあるNPO法人グリーンウッドワーク協会は、2008年に設立。代表の小野敦さんは全国を飛び回って講座を開催するほか、森林文化アカデミーでも講師を務めています。アカデミーから近いため、グリーンウッドワークに興味を持つ学生たちを休日や夏休みなどにインターンとして受け入れてもらっています。
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NPO法人グリーンウッドワーク協会代表・小野敦さん(右)
グリーンウッドワーク・ラボは、指導者養成講座OBの久保田芳弘さんが代表を務めていて、卒業生2人もスタッフとして活動しています。岐阜市のぎふ木遊館でスプーンクラブを定期開催しているほか、道具の開発なども行っています。スプーンクラブの運営には学生も参加しています。
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ぎふ木遊館でのスプーンクラブ