2 木造建築病理学
リフォーム時代の必須科目
日本は、2033年には住宅の3戸に1戸が空き家になるという統計が出ています。
これからの設計者にとって改修設計のスキルは必須であり、それは新築の設計より高度な技術です。
「木造建築病理学」では、木造建築の調査手法、定量的な性能評価、説明力などの改修技術を体系的に学びます。
実際に建物調査を行い、調査結果はわかりやすい「住まいの診断レポート」にまとめます。
壁や屋根など、開けてみるまでわからないという曖昧さを極力少なくし、適切に診断・計画する最先端の改修技術です。
「住まいの診断レポート」でしっかり診断
年2回集中的に行われる木造建築病理学で、改修について体系的に学びます。
①劣化対策
②耐震性
③断熱性
④省エネルギー性
⑤バリアフリー性
⑥火災時の安全性
既存建物の6つの性能を定量的に診断、表現する手法を学び「住まいの診断レポート」にまとめます。
診断レポートでは、6つの性能を所見とともにバーチャートやレーダーチャートにまとめます
これは建物全体の性能バランスが一目でわかり、改修前後の比較もできます。
このレポートを、一般の住まい手にもわかりやすく伝えるためには、内容についての十分な理解や、伝える技術が無いと出来ません。
これも重要な学習のポイントです。
講座の中では、各種性能の根拠や計算、診断方法に加え、実践例の紹介もあり、
改修方法の様々なパターンや必要なコストを見ることができます。
また、不定期に入る実際の調査実習で、現場での確認ポイントや調査の段取り、
野帳のまとめ方なども学び、調査、分析手法を身に着けていきます。
「木造建築病理学」を活用した改修手法で、国土交通省 長期優良住宅先導事業の採択を3回受けました。
「一般社団法人 住宅医協会」と連携した実際の改修物件で、最先端の調査・改修技術を学ぶことができます。
■建築病理学とは
ヨーロッパやアメリカでは、古くから歴史的建築物の補修が盛んであり、経験的、個別的にノウハウが蓄えられてきました。建築病理学の目的は、全ての建築物に生じる欠陥、不具合の技術的側面を考究すること、建築設計、施工、使用過程における重大な欠陥、不具合を診断し、予防するための情報を提供することとしています。
イギリスでは、建築病理学を用いて、1)既存建築物の劣化診断、補修設計、2)建物の担保価値の評価、3)建物の適法性評価、4)過去の修繕効果の検証、5)維持管理・補修工事の根拠提供、6)建物の用途変更時の根拠提供、7)修繕義務違反建物に関する法的措置の根拠提供などに応用的利用がなされています。このような状況の中、イギリスの25大学には、建築病理学の講座があり、教育も充実しています。
■森林文化アカデミーの木造建築病理学
欧米に比べ日本では住宅の診断業務がビジネスとして十分拡大してはいませんが、今後の建物の高寿命化と性能の確保の必要性から、必要不可欠な技術体系であると考えられます。そこで英国での建築病理学とその関連資格を紹介している中島正夫先生(関東学院大学)監修のもと、2006年度に授業科目として岐阜県立森林文化アカデミーでは「木造建築病理学課程」を設置しました。これは教育機関では日本初の設置となります。この「木造建築病理学課程」において、これらの知識・技術を修得することができます。
木造建築病理学課程は、「木造建築病理学」(講義・実習、60時間)及び「木造建築病理学実習」(実習、30時間)の計90時間からなっています。この課程の開講期間は、2年間に渡る内容となっています。実物件での調査に参加し、診断レポートを作成することで実践力を身につけます。さらに、これらの講義及び実習を受講した後、中間試験及び最終試験という2回の試験があります。
木造建築病理学課程では、以下のような授業構成となっています。1)建物の長寿命化の必要性、2)建築病理学とは、3)耐震調査の目的・内容とその手順、4)各種検査機器と使用法、5)構造的不具合の原因と対応策、6)木材の腐朽と防腐、7)現場における検査手順、8)報告書作成法、9)床・壁・屋根、その他の不具合とその対応、10)建築病理学の必要性、11)床下環境について~防蟻対策、12)温熱環境の改善と対策、13)法規・制度関連、14)室内空気質の改善と対策、15)契約依頼者との契約上の注意 などです。木造建築病理学以外の専門授業で補完していく内容もあります。