4 ネットワーク構築
人の繋がりが資産になる
森林文化アカデミーには、木造建築以外にも林業、木工、森林環境教育といった森林に関わる分野があり、専門性の高い同級生をはじめ、卒業生、教員、全国のトップランナーの外部講師が集まっています。
在学中に木造建築や森林に関わる人の「ネットワークの構築」が可能で、卒業後に皆さんの資産になります。
また、非常勤講師にお招きする木造建築のトップクラスの専門家や、実践プロジェクトを協同で行う全国で活躍する卒業生、専門技術者研修に参加する建築実務者など、2年間の間、常に様々な出会いがあります。それらをうまくつなげるのは、あなた自身です。
そして林業や環境教育、木工といった森林・木材のスペシャリストともつながる機会は他の学校ではほとんどありません。
この貴重な2年間を活かして、お互いに信頼できるネットワークを構築しましょう。
■卒業生ネットワークで実現「TOKYO STYLE」モデルハウス
TOKYO STYLEとは岐阜に本社を持つ工務店の東京モデルハウス・プロジェクトです。
卒業生の中島さん(卒業生紹介を参照)が企画し様々な人が集まって実現しました。
モデルハウスをつくるにあたって、自社のスタンダードとすべく、計画や構造、温熱性能、素材などの考え方を整理する必要がありました。
そこで、在校生や卒業生、教員、プロの建築士の方々を交えて、基本設計のプランニング大会を企画し、様々なアイデアが生まれました。
その後も、中島さんを中心にアカデミー関係者や建築士の方を巻き込みながら実施計画がまとまりました。
施工時には、地域の方や一般の住まい手の方も巻き込んで、左官や床フローリング張り、造園といったワークショップを開催し、みんながこの住まいへの愛着を感じながら竣工しました。
これらのワークショップの企画・運営は自力建設での経験があればこそとのこと。
モデルハウスに置かれる家具は、木工卒業生が主宰するAC CRAFT(美濃市)の石井さんにプロデュースしてもらい、岐阜の木を使った素敵な空間に仕上がっています。
この場所で、ライフスタイルを含めた住まいを提案するため、オープン後も様々な企画を実践しています。
ここでもアカデミー時代からの人のネットワークが活躍します。
東京を拠点に活動する中島さんですが、木材や大工さんは地元である岐阜県の加子母から。大都市東京にいるからこそ暖かな心遣いが一層感じられる心地いい空間です。
■ネットワークで専門家が集合:住宅医の詳細調査
木造建築病理学に基づく調査は、建物の概況を含めて劣化対策、耐震性、温熱性、省エネ性、バリアフリー性、防耐火性の6項目についてまとめます。診断するための詳細調査は、住まい手の負担も考慮して1日で終わらせる必要があります。そのため、大きな物件では多くの調査員が必要になります。
2017年に実施した近江八幡での詳細調査の際には、アカデミーネットワークを使って、調査募集をしたところ、教員2名、アカデミー学生3名をはじめ、アカデミー卒業生、科目履修生、アカデミーに関係のある設計事務所、工務店など、総勢25名が集まりました。
25名のうち、建築士は19名。普段は設計業務を行っているプロの方々も多く参加しています。
この集団に学生も混じって、床下や小屋裏へ入り調査を行い、報告書にまとめます。さすがにプロの連携は段取り良く進みます。効率的な運用も身をもって体験しつつ、自らのネットワーク構築につなげます。
■海部外連携でネットワークの幅を広げる
森林文化アカデミーとドイツのロッテンブルク林業大学の間で教育連携を結んでおり、毎年、学生が行き来しながら互いに考え方を交換し、森林や林業、建築に関する拡がりを実感しています。
2016年に日独木造建築シンポジウムを開催し、日本、ドイツの木造建築の特徴を明確にし、木造建築の未来についてディカッションを行いました。続く2017年には、第二回日独木造建築シンポジウムを開催し、それぞれの木材や省エネ、温熱環境における課題を明確にし、お互いに取り入れるべき要素を整理しました。
これらをより深める意味合いで、1週間程度の短期集中設計ワークショップを2017年度からはじめ、両校からの学生が協同で実設計の基本構想を作成する企画をスタートしました。2017年度は日本を舞台に、翌年はドイツを舞台にと交互に行き来しながら、両国合同の設計を通して設計手法の違い、材料の扱い、建築法規の考え方など、体験しつつ、クライアントにプレゼンする内容となっています。
■森林技術開発・普及コンソーシアムでの企業連携
森林文化アカデミー内に、産学官連携・海外連携により新たな技術の開発やその普及を図るため、積極的に外部資金を導入しながら共同研究・開発、研修・交流に取り組む『岐阜県森林技術開発・普及コンソーシアム』を設置しています。
多くの企業が参画し、
- ワーキンググループによる共同研究活動
- 木材生産の効率化(欧州の先進林業技術研修など)
- 保育の合理化(コンテナ苗の調査・研究、利用技術の開発など)
- 「ぎふの木」の新たな創造(デザイン開発、生産・加工・流通の連携強化など)
- 木質バイオマスエネルギー(温浴施設における熱電併給システムの構築など)
- 木造建築の市場開発(非居住系店舗等の木造化による新たな市場開発など)
- 木材研究施設(オープンラボラトリー・木材乾燥機)を活用した共同研究と会員に対する施設利用料の助成
- 技術講習会の開催(木材乾燥技術、林業架線集材技術など)
- 国内外最新情報の提供(会員相互による交流研修会の開催、海外先進技術の紹介)
- その他、新たな技術や製品の開発に関するテーマの検討(新規WGの設置)
を行っており、学生もいろいろな場面で参画できます。