4 森林獣害対策
ニホンジカやツキノワグマ、日本に昔からいて人間と適度の距離感を保ってきた獣たちですが、今、林業を考える上で、捕獲や防除を考えないと、将来の森づくりができない非常事態になっているのです。というわけで、森林獣害対策技術は、今後の森づくりを担う行政担当者、フォレスター、森林技術者にとって外すことのできないスキルです。本学では、座学や豊富なフィールド実習を通し実践的な知識・技術を学びます。
近年、ニホンジカやツキノワグマ等による森林被害が深刻化しており、中でもニホンジカによる被害は、個体数増加や生息区域拡大を背景に、国内における約9000haに及ぶ野生動物による森林被害の約8割を占め、その被害は、人工林にとどまらず天然林にまで及び、ニホンジカの生息密度が高いエリアでは、下層植生の消滅など、森林の生態系にも深刻な影響を及ぼすほどとなっています。
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造林地にたたずむニホンジカ
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ニホンジカによる造林木の食害
これまで森林における獣害対策では、防護柵やネット、ツリーシェルター、忌避剤塗布等による守りの対策が主に行われてきました。しかし、地形や気象が厳しく対象エリアも広い森林では、そもそも守りきることが難しく、また、ニホンジカの個体数を減らさなければ問題の根本的な解決につながらないことから、これからの被害対策においては、守りの対策=防護対策に加え、シカの個体数を管理する攻めの対策=捕獲対策の強化が強く求められています。
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守りの対策=防護対策
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守りの対策=防護対策
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攻めの対策=捕獲対策
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攻めの対策=捕獲対策
一方、対策の担い手に目を向けると、これまで捕獲対策を主として支えてきた猟友会等の一般ハンターは高齢化が進み、将来的に担い手の確保が難しくなることが予想されています。
このような状況を踏まえ、森林文化アカデミーでは、森林獣害の状況を判断することができ、捕獲を含む必要な対策を自ら計画・実行できる人材の育成を目指し、座学や豊富なフィールド実習による実践的な学びの場を提供しています。
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授業風景 わな猟技術
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授業風景 巻き狩り体験
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授業風景 解体体験
森林資源の持続的な活用、確実な更新確保のためにも、少なくとも林業事業地においては、当事者である林業者が対策の中核となるべきと考えます。
近い将来、チェンソー技術と同様に、森林害獣の捕獲技術(狩猟技術)も、森林技術者の必須スキルに加わっていることを期待します。