林業専攻
卒業生の進路

坂本 陽 -データによる管理を行い、新しい林業を目指す-

データによる管理を行い、新しい林業を目指す
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プロフィール

1977年 生まれ  BoxBox代表

システムエンジニアを経て、2011年に森林文化アカデミー入学。アカデミー卒業後、BoxBoxを立ち上げ、林業用生産管理システムの開発や数値データに基づく提案型施業を行っている。


白川町にある作業現場を見せてもらいました。間伐して木材を搬出している途中です。ポータブルのウィンチで搬出しているとのことです。質問1)今の仕事内容を教えてください。

山の現場での作業とソフトウェアの開発を掛け持ちしながら仕事をしています。山の現場では、山主さんから 請け負った間伐作業を行い、伐った木材を搬出して所有者に利益をお返ししています。山に行かない日は、林業の生産管理用のソフトウェア開発を行っています。今は月の半分強を現場の作業に当てています。

質問2)今の仕事でキツイなと思うことと、やりがいを感じることを教えてください。

月に2回、木材市場の市があり、4tユニック1車分の10m3出すことにしているので、そこに向けて作業の段取りを行うのがキツイです。だいたい6~7日間で10m3出すのですが、今のように梅雨時期だと、支障木伐採など他の仕事との調整が大変です。冬は雪の心配もしなければいけません。全体的に仕事へのやりがいは感じています。特にアカデミーで学んだことを実践しながら出来ていることがやりがいです。

学生の時に、京都の森林組合と共同して、生産管理のためのソフトウェアを開発しました。卒業後、BoxBoxを立ち上げソフトを販売しています。質問3)今の仕事を通して社会にどんな貢献をしていると感じますか?

山主さんから「林業は儲からない」とか言われるのですが、よく聞いてみるとはっきりと理由を知らない場合が多いです。そこで自分の山の価値が分かるように、直径と平均単価の表を作成して、市場全体の平均と比較して、自分の山の木が平均よりも良い木なのか悪い木なのか、お知らせしています。また、山菜となるコシアブラを山主さんのところへ持って行ってあげたり、ヤマモミジがありますよとか伝えてあげると、とても喜んでもらえる。山主さんも、実際自分の山に何が生えているかよく知らないですね。興味が出ると、山に足を運んでくれます。

質問4)森林文化アカデミーに入ったきっかけは?

IT技術を活用して、新しい分野で仕事がしたいと思ったのがきっかけです。生きていく上で大事な農林水産業の中でどの分野にしようか迷ったのですが、林業を選びました。理由は、林業は一年で結果が出るわけではなく、収穫まで何百年かかるようにスケールが違います。難しく、その分やりがいを感じられそうだったからです。林業を勉強するにあたり、農学部系の大学院とも迷いましたが、より実践的なアカデミーを選びました。

質問5)アカデミーで得た学びは何ですか?

いろんな森林や林業の現場を見たこと、また造林や生産システムに関する授業は、今の仕事につながっていて、まさに教えてもらったことを実践しています。また植物同定の授業や生態学、生理学、農薬科学、動物の授業はとても役立っていて、今でも勉強して知識を深めています。知識を持っていれば根拠を持って施業したり、山主に説明することが出来ます。一方、専門以外の授業はあまり履修していなかったのですが、木材の流通や加工についてはもっと勉強すればよかったと思います。

質問6)アカデミー入学前の仕事が、今に活きていると感じることはありますか?

部下を抱えて仕事の管理をしていたので、データで物事を考えるくせがついています。例えば、今の状況を考える時にはデータをとります。自分の感覚というのはデータと比較してみると、意外と異なっている場合があります。

質問7)今の仕事をしていく上でのモットー、若い人へのメッセージは?

林業がもうちょっと当たり前の仕事になるようにしたいですね。今は林業自体を知らない人が多いし、大抵選択肢に入りません。他の分野の技術などを活用して技術革新もして、特別な仕事ではないよという、というように業界全体のレベルアップすればいいですね。そうして今開発しているソフトを使う人が増えるとよいですね。

林業に携わるには、いろいろな道があると思います。自分にあった道を見つけてください。


課題研究担当教員より・・・

林業の課題は、経営に関わることを数字で管理が出来ていないところだと思っていたところ、IT関連分野出身の坂本さんも同感で、1年次から生産管理のソフトウェア開発に取り組み、そのまま課題研究のテーマへとつながりました。今でもきっちりデータを取り、根拠をもった提案を山主さんにしている姿を見て、学生の時と変わらぬ仕事のスタイルに尊敬の念を持ったとともに、背筋が伸びる思いがしました。坂本さんが「まさかトラックに乗って材を出すとは思わなかった」というのは、私も同感です(笑)。

(講師・杉本和也)