塚原 寛裕(つかはら たかひろ)
自然環境の調査から保全のための提言、そして施工までの仕事に携わる専門家
プロフィール
1985年 生まれ 株式会社テイコク 勤務
岐阜県関市出身。大学入学前は工学部志望だったが、入学後に生物学を学び、その面白さにハマる。卒業研究では東濃地方の植物相について調査。自然についてさらに深く学ぶために森林文化アカデミーに入学。里山の自然について学び、卒業後自然系調査会社に就職。動植物の調査を専門に仕事を続けるが、調査の先にある影響評価や保全のための計画設計や施工に関わる仕事を目指し、現在の会社に転職。
質問1)今の仕事内容は?
一言で言えば、自然を守る仕事をしています。開発の計画がされている場所を調査し、工事などによって生きものにどのような影響があるのか評価します。その後、必要に応じて貴重な動植物保全策を提案、場合によっては施工管理まで行います。たとえば小規模なソーラー発電所が計画される際にあらかじめ調査を行い、希少種や絶滅危惧種が発見された場合、移植や生息地保護などの対策を検討します。次にその結果に応じて保護・保全の対策を実行します。仕事場所は全国にわたりますし、受注先は民間から国、地方公共団体までさまざまです。
質問2)今の仕事のなかできつかったこと、やりがいを感じたことを教えてください。
自然相手の仕事なので、まずは体力勝負。山に登って道なき道に分け入ったりするので、慣れるまでは体がキツかったです。また、生きものの生態に合わせて調査を行うので早朝や夜間の調査もあります。その他、ハチやクマなど危険な野生動物に遭遇することもあります。
やりがいを感じるのは、調査をしていて希少種を見つけた時や結果が出たとき。生態を知らないと発見するのが難しい生きものが多く、調査方法や機器の設置場所など適切に行わなければ結果が出ないことが多々あり、結果が出たときは自分の能力に手応えを感じる瞬間でもあります。そしてみつけた希少種を、無事に保護・保全できた時の喜びはさらに大きいです。
質問3)今の仕事を通して社会にどんな貢献をしていると感じますか?
人知れず開発で失われているはずだった生きものを救うことができたとき、自然を守ることの重要性を実感します。これからは持続可能な社会に向けて多くの隣人たちが暮らす自然とうまくつきあっていく必要があると思います。
質問4)アカデミーに入ったきっかけは?
大学では生物を学びましたが、得た知識を確かめたり実践したりする機会は多くありませんでした。現場で学びたい、そう思っていたときに、知り合いから美濃市におもしろい学校があると教えてもらいました。HPや学校案内をみて入学を決めました。
質問5)アカデミーで得た学びは?
生態系や動植物に関する知識をさらに掘り下げて学びました。自然を判読する能力を得ることができました。
質問6)自分の専門分野の授業以外で役に立ったことは?
現在、仕事やプライベートで自然観察会の講師を行うことがありますが、インタープリターの先輩や友人の観察会を見る機会があり、段取りや間の取り方などが活かされています。
また、調査の前段階として、調査地への侵入ルートを確保する場合がありますが、林道で倒木を処理するときなどに、林業系の授業でチェンソー、刈り払い機などを使って作業した経験が役に立っています。
質問7)アカデミー入学前の仕事や家業など、バックグラウンドが活かされていると感じたことは?
入学前は大学生だったので、授業で生物について学びました。一通りの同定技術(現場の生きものの名前が何であるか判別する技術)は大学で既に学んでいました。
質問8)今の仕事をしている中での「モットー」と、これからこの道を目指す若者へのメッセージは?
・モットーは「技術を磨く」こと。常に向上心を持って技術の向上に取組み続けることの大切さを日々実感しています。地域によって生息・生育している動植物が異なることや、生態がわかっていない生き物がたくさんいるため、勉強に終わりはありません。現在も日々研鑽を続けています。
・若者へのメッセージは、「好きなことを仕事にしよう」です。仕事には困難がつきものですが、やりたいことを仕事に選んだのであれば必ず乗り越えられるし、続けていてよかったと思えるときがくるはずです。
教員からのコメント
在学中は物静かだった塚原寛裕さん、生物に関する授業は集中して受講していました。在学当時から目標がぶれておらず、将来は自然系のアセスメント、コンサルタント業務を行う会社に就職するという目標に向けて邁進しており、指導する方もやり甲斐がありました。森林文化アカデミーは、幅広い分野の専門性を持った教員を擁しているので、本人の指向に合わせた教育ができるのが他にない強みです。また、卒業後も卒業生同士の交流で有益な情報交換ができるのもよいところですね(柳沢)。