島﨑 野乃子(しまざき ののこ)
アカデミーに入学を決めたキッカケ
全てのきっかけは、小学5年生の頃に近所の公園にカワセミという鳥がやって来たこと。その美しさと面白さに魅了され、写真を撮るおじさんたちに教わりながら毎日観察するうちに、鳥と、そこに集まる人たちが私の居場所と思えるほど大好きな存在になりました。 就職を考えはじめた大学時代、アルバイトで”インタープリター”という仕事に出会い、自然の楽しさや良さを誰かと分かち合い伝えるという、小さな頃の私が夢中で楽しんだ世界を仕事にできるのだと知り、飛び込むことに決めました。
そんな時、とある就活イベントで偶然立ち寄ったのがアカデミーのブース。話を聞いているうちに、ここでなら自分の夢を叶えられるかもしれない…と、就職先を探していたつもりが、気づけば学生になっていました。
アカデミーの学生生活で印象に残っていること
対象もフィールドも様々に、場所からプログラムまでなんでも作る、とにかく実践、実践、実践!の日々。そしてその中で常に、自分はここで何がしたいのか?何になりたいのか?を問い続ける毎日でした。今思えばのんびり屋の私にはペースが早すぎて…大変だった〜!というのが率直に出てくる感想です(笑)
しかしそれ以上に、あの時でなければできなかったことを限界以上に経験したことが今かけがえのない財産となっています。そのひとつが、毎年夏冬に実施しているフリーキャンプ「もりもりキャンプ」での経験。参加する子どもたちはもちろん、スタッフ側となる学生たちの性格や関心もバラバラの中でキャンプを作り上げるには、相手のありのままを受け止め、寄り添うこと。そして自分もきちんと素直に気持ちを伝えること。コミュニケーショが必要不可欠でした。
受け身な私にとっては特に後者がひと苦労で、言葉よりも先に涙が溢れることもしばしばでしたが、「それも素直な心の表れ」「泣いても良い」と言ってもらえたことが衝撃でした。仲間に大切にしてもらい、そして自分でもたくさん失敗しながら大切に実践してきた姿勢は、今インタープリターとして大切にしている在り方の基礎になっているように思います。
学生時代は必死すぎて落ちていなかった経験や学びも、社会人として現場に出たあとで「こういうことだったのかも!」と不意に納得することが何度もありました。この先長い時間をかけて少しずつ自分の中で磨いていくための、原石のかけらをたくさん集める時間だったように思います。
仕事で意識していること
勤務先の那須平成の森は標高1400〜600mの高地にあり、加えてもともと御用邸の一部だったという特色を持つ森。お客様にとっては非日常が詰まった場所です。そしてやってくるお客様の年代や興味は様々。そんな場所で少しでも自然の楽しさを感じ、自分の暮らしに持って帰ってもらいたいと思っていただくために意識していることが、在学中にナバさんによく言われた「普通の感覚を大切に」「たくさん遊びなさい」ということです。
どんなお客様も、楽しいことや知っている話題がまずは入り口となって、どんどんこちらの話に耳を傾けてくれるようになると感じます。自然だけに目を向けていると、町からやってくる人の楽しみや関心事がわからなくなるもの。自分が当たり前だと思っていることも立ち止まって丁寧に扱うこと、そして自分自身が色々な場所で新しいワクワクをたくさん経験することが、自然のことや伝え方を身につけることと同じくらい大切だと思っています。
いまの仕事を選んでよかったと思うこと
自然のすぐそばで1日の大半を過ごせることはもちろんですが、一番は見える世界の広がりを感じたことがこの仕事を選んでよかったと感じることです。 那須平成の森のガイドでは森の生き物の「暮らし方」や「つながり」をテーマに取り上げることがよくあります。
森には本当に様々な生き方の生物がいて、例えばキノコのように植物をどんどん分解して栄養を得るもの、クマのように木の実や植物をもりもり食べられる広い森がないと暮らせないもの、キツツキのように木に穴を開けることで意図せず他の生き物たちの住処をつくっているもの…みんな違っているけれど、そこに間違いはなく、むしろ森全体にとってはどれも欠かすことのできない大切な役割。様々な生き方が絶妙に混ざり合って、今の森の姿があります。
あるガイド中にふと、それは人の世界も同じだと感じたことがありました。色々な生き方の人がいて、そのどれもが間違いじゃない。違うからこそ、出会って交わることで世界は豊かで面白くなる!森を知り伝える中で、私は周りの人はもちろん、自分自身のこともうまく認めて大切にできるようになってきたと感じます。
日々森を歩いて大切だと思うことを人に伝えながら、自分自身もどんどん考え変わっていき、その思いをまた誰かと分かち合いながら世界が広がっていく…幸せな仕事だなと思います。
(2024.1.20掲載)