活動報告
最近の活動
月別アーカイブ
2020年07月21日(火)

第6回岐阜県地域森林監理士養成研修を開催しました。

(1)更新に関する基礎知識 9:00~10:00

講師:森林文化アカデミー 教授 横井 秀一氏

 

◆更新は、攪乱がなければ起こらない=リスクを常に考えないといけない。

◆また、一度植栽したら戻ることはできないので、目的・ビジョンを明確にすることが大切。

そういった考えの導き方を実際に一枚の写真から読み解き、説明いただきました。

例えば、このような林床の山ではどう考えるか

 

ここは、『杉林』です。

林床で芽吹いているのはモミで、間伐により光が入ったために芽吹いたと思われます。

モミの木は光が充分であれば、クリスマスツリーのように上へ伸び(成長し)、円錐形の樹形を形成します。しかし、光が十分でないため、写真の葉は横に広がっています。

このモミの木を育てようと思うと光を当てるといいが、この林で間伐して育てている杉はまだ充分に育っていないので、まだ更新(主伐)の時期ではありません。

では、この杉林をモミ林に更新しようとした場合、観察の結果、ここでは光を入れればモミが芽吹くことは分かったので、あとは、その更新のタイミングを複合的に考える必要があります。

更新のタイミングを考える場合、情報収集することが必要です。情報収集するためには、『樹種を読み解く力(知識)』、『成長の具合を読み解く力(知識)』、『植物の生態の知識』が必要であることが分かりました。

 

最後に、横井氏からは、

◆更新の失敗は、1個~少数の因子で起きる

◆更新の成功は、全ての因子をクリアしなければいけない。

と話しがあり、『更新の計画は、もっと真摯に考えなければいけない。』と、メッセージをいただきました。

 

(2)品種特性を利用した人工更新技術 10:10~12:00

講師:岐阜県森林研究所 主任専門研究員 茂木 靖和氏

次の時間は、岐阜県森林研究所で育種・品種の研究をされている茂木氏より、岐阜県が蓄積した品種の情報を、お話いただきました。

茂木氏も、横井氏と同じく、植えるときにすべてが決まってしまうので、目的を明確にして品種を選ぶ必要があると言われます。

植林を行ったことのある受講生も苗の品種に関して深く掘り下げたことはなく、研究者である茂木氏の豊富な知識は非常に有益なものであり、意外と苗木には選択肢が広いということがわかりました。

事務局からは、

林業が儲かっている国では苗木の研究がスタンダードとなっている。

林業が儲からないといわれる中、苗木の品種改良にチャンスがあるのかも知れない。

といったアドバイスもありました。

 

 

(3)針葉樹人工林の針広混交林化・広葉樹林化の技術 13:00~14:05

  講師:森林文化アカデミー 教授 横井 秀一氏

 

これまでの時間で、更新を計画する際には漠然とした希望的観測ではなく、現場をよく観察して、よく考え、明確なビジョンを持つことがいかに大切かを学びました。

明確なビジョンに向かうにはどのように計画を組み立てればいいのか。

特に、多様な樹種を扱う広葉樹林化を目指すには、描いたシナリオ通りに進まなかった場合の代替え案を持ちながら、順応的に管理を進める技術が必要になります。

そういった管理を支援するツールが横井氏も関わられた「広葉樹林化技術の実践的体系化研究」の結果報告の中で公開されているとのことです。

http://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/bl_pro_1/taikeika/intro.html

 

この中には、

・目標林型の決定

・間伐スケジュールの決定

・考え方、基本的知識、留意点

 

を支援するツールがまとめられています。

 

幅広い知識と現場を読み解く技術が必要とされる更新の計画に、このようなツールを大いに活用して、根拠をもった判断を行うよう心掛けたいものです。

とはいうものの、過信は禁物。違和感を感じたら考える。支援ツールは、そんな違和感に気づく感性を育てるツールと捉えるべしとアドバイスをいただきました。

 

(4)更新に関する質疑応答 ・情報 14:10~16:10

回答:森林文化アカデミー 教授 横井 秀一氏

回答:岐阜県森林研究所 主任専門研究員 茂木 靖和氏

 

最後の時間は、質疑応答と情報交換です。

 

この日学んだような内容は、実はネットで検索してもたどり着けないことがほとんどです。

それは、研究者の持つ情報のストックは大量にあるものの、ほぼ間違いないだろうといった情報でも、研究者からしてみれば、まだまだ不確実で発表にまでいたっていないからです。

 

なので、研究者が2人揃った今回のこのような機会は非常に貴重なものです。

 

現場で起こる疑問は意外とささいなことであったり、相反して、壮大すぎて疑問の本質が分からなくなったりします。

今回の意見交換会は、受講生がそんな疑問をぶつけるよい機会となりました。