東京チェンソーズ代表 青木亮輔さんに学ぶ
『東京の木の下で、地球の幸せのために、山のいまを伝え、美しい森林を育み、活かし、届けます』これは東京チェンソーズの企業理念(一部)であり、「林業に縛られず、林業にこだわる」活動を実践されている青木さんをお招きして、起業も含めて学びました。
大学卒業後1年間の会社勤めの後、「地下足袋を履いた仕事がしたい」、「後継者不足の林業なら自分にも活躍の場があるのでは」と、森林組合の作業班として活動。
その職場は当時の林業現場で一般的であった平均年齢63歳という職場、そこで仕事をする中で、「事務方VS作業班」の構図も目の当たりにする。
現在は、東京チェンソーズの代表取締役だけでなく、一社TOKYOWOOD普及協会理事、檜原村木材産業協同組合組合長、東京未来ビジョン懇談会委員、内閣府規制改革推進会議専門委員などの要職に就かれています。
会社の業務内容は林業、イベント、情報発信、新規事業展開など多岐にわたっています。
青木さん、29歳の2006年森林組合から独立、4人のメンバーが15万円ずつ出資して、刈払い機やチェンソーを購入。当時の森林組合作業班は、日給月給で、収入が少ない月は10万円にも満たなかった。そこで独立起業して、森林組合の下請け業から始めた。
独立したとは言っても、森林組合の下請けばかりでは良くならないため、元受けとなれるよう努力し、その後、2011年に法人化した。
現在は14名の職員で、多様な事業展開をしています。
社員は全員が村外からのIターン、経歴は勿論多様。前職が外資系コンサルタントや新聞記者、アウトドアメーカーなど、各々の会社でしかりした社会人教育を受けた人ばかりであり、各人がその会社で得た独特なスキルが発揮できるメリットもある。
売り上げの8割近くは公共事業(東京都の産業労働局や環境局の森林対策、そして花粉対策事業など)。
作業は春は植え付け、夏は下刈り、秋から冬は間伐などを実施している。
8割近くが公共事業では、「受け身」なのではないかとの疑問から、2016年に「中長期計画」を立て、60年生スギ材1m3をいくらで販売できればいいのかを検討した。
直径20cm、長さ4mの丸太6本で約1m3の材積、補助金無しの生産コストは32,700円、補助金があっても22,300円。スギ材の市場価格は10,000円/m3。本来は12,300円~22,700円の赤字ではないか? これをなんとか高く売れるような工夫する必要がある。(生産コスト:東京チェンソーズ試算)
例えば、元玉から2番玉は、天然乾燥の板材に加工し、東京都が補助している都内幼稚園などの内装木質化などとして販売するとか、2番玉~4番玉は柱材として工務店と契約販売するとか、未利用材を遊具などに木材を利用し尽くすことを目指す。
一般的に除伐される被圧木の強度を調べるヤング係数がE130もあったため、これを『細マッチョ材』と名付けて利用促進した話もありました。
TOKYOWOOD普及協会では、木造建築で持ち家を建てたい顧客のバスツアーを催して、環境に極力負荷をかけない大橋式作業路など道づくりの話や、「木は生き物なので、天然乾燥材は割れたり、捻じれたりすることもある」と現場で説明。こうした活動によって、顔の見え、地域の木材を使うことに価値を見出した顧客が増え、顧客単価が200~300万円上昇したそうです。
会社経営上は、14人で個人の能力を含めて全員が能力評価をして、賞与などに反映させて、モチベーションアップにつなげている。・・・これは凄いことです。
「木育」は『木材ニーズの入り口にする』
東京美林倶楽部、森デリバリー、トイヴィレッジ構想などによって、様々な体験を提供し、木の良さを伝える。
過去、東京都が都民に対して「東京の森林への期待」というアンケートをとった結果、都民は水質浄化機能や二酸化炭素固定など環境材としての森林、あるいは体験活動の場としてのし期待ばかり。
木材産業に対する期待は、僅か3%しかない。つまり都民のニーズとかけ離れた活動をいくらしても意味がない。だからこそ、入り口を都民が関心ある環境保全・体験にしなければ人が来てくれない。
東京美林倶楽部は東京に美しい森をつくるプロジェクトで、200家族が参加して森づくりを進めている。
入会金5万円、年会費2000円で植林活動し、保育に経費のかかる30年間育てることを想定して活動している。
2014年には「檜原村木のおもちゃヴィレッジ構想」を打ち出し、檜原村を日本一有名な木のおもちゃ村にするため、ウッドスタート事業やおもちゃ工場を稼働させる予定。
とにかく、青木さんたちは従来の泥くさい林業活動ではなく、企業の理論でしっかりした進捗管理と評価をする新しい時代の林業を目指しておられます。
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。