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2018年02月01日(木)

平成29年度中部森林技術交流発表会で発表する

1月30日(火)・31日(水)に中部森林管理局(長野市)にて中部森林技術交流発表会が開催されました。

エンジニア科2年生、境田夕姫さんが発表しました。

 

タイトルは「県産材でつくる画用木炭」

画用木炭とは、デッサンに使われる画材です。鉛筆よりも光の表現に優れ、美大の受験生には親しまれているそうです。私(吉野)の好きな池田満寿夫の作品にも木炭画は多く登場します。

さて、境田さんは「木材利用総合演習」(2年生必修)の課題に、「県産材でつくる画用木炭」を選びました。身近な9種類の樹木の枝を、空き缶を使って炭化させて、画用木炭を作ります。試しに描いてみます。境田さん自身や他の人にもアンケート調査を協力してもらって、使用感の評価をします。市販品(ヤナギ)比べてみました。注目の結果は?

クリ、アラカシ、エゴノキが、よさそうです。くわしくは・・・・

クリは画用木炭として市販品があるそうです。

アラカシは、木炭として着目されていませんが、岐阜県内の里山に多く生息しています。緑化木にも用いられていて剪定枝の有効利用として可能性が高いと思います。

エゴノキの木炭は、柔らかくきめ細かい点が評価されており、漆塗りの仕上げ研ぎとして使われていました。エゴノキは、和傘に必須の樹種ですが、美濃市ではそのためのエゴノキを育てています(エゴノキプロジェクト)。和傘には使えないような細い幹や枝を有効に利用できます。

口頭発表と併せて現物を展示しました。多くの方が関心をお寄せくださり、試し描きを体験していただきました。

 

空き缶で炭を焼きます

ためしてみました。

有望な樹種:クリ、アラカシ、エゴノキ(ただしクリはすでに市販品がありました)。

現物も展示しました。関心を持ってもらえました。

質疑応答と審査員のコメント

「練り消しの具合は?」と意表を突く質問もありました。実は、境田さんも、我々教員も、実験中にはそこまで気がまわらなかったのです。言われてみればそうだなあ、よく関心を持っていただいたなあ、と思いました。まあ、質疑応答の面白いところです。恐れるのではなくポジティブに考えるわけです。

審査員の先生方からは、「ユニークな取り組みである。」「9樹種を実際に体験してみたが、3種類は使えそうだ。」「エゴノキプロジェクトのコラボもできればいいね。」との高評価をいただきました。

木材利用総合演習について

木材利用総合演習は、身近な課題やトピックスをテーマとして各自が選び、1)調査や実験を通じて、物事を論理的に考える能力を身に着ける、2)説得力のあるプレゼンテーション能力を身に着ける、の2つを目的としています。この授業の成果を今回発表しました。

おわりに

毎年、中部森林管理局では、中部森林技術交流発表会を開催しています。国有林の関係者だけでなく、民有林の現場の第一線の方から、大学院生、大学生、アカデミー生、高校生にいたるまで、幅広い層に身近な発表の場を提供しています。森林技術に関係する人の共通の場があることはとても有意義です。なぜなら、学生にとっては、現場の問題点や課題点を知ることができ、長らく現場に携わってきた人にとっては、若い人の取り組みが新しい取り組みのきっかけにもなり得るからです。中部森林管理局の見識の高さがうかがわれます。スタッフの皆様方、審査員の先生方に感謝します。(木造建築教員 吉野安里