「すべての人を森とつなげる」持続可能な暮らしの教育 〜ドイツ森林環境教育現場視察ツアー報告〜
ロッテンブルク大学との連携協定事業の一環として、先月9月22日から10月1日までの約10日間にわたり、私ナバが、森林文化アカデミーの学生5名を引率しドイツ・バーテンビュルテンベルク州(BW州)の森林環境教育現場を訪問する研修ツアーを実施してきました。
ドイツでは「Forest Pedagogy (森林教育)」と呼ばれるこのジャンル、いろんな人に話を聴いたり、体験を重ねていくうちに、どうやら「森を舞台にした持続可能な暮らしのための教育」とでも言った方が良さそうであることがわかりました。そう、まさにアカデミーが目標の一つとしている「森から始まる持続可能な暮らしの提案」そのものですね。
単に林業を理解してもらうための教育ではなく、我々の衣、食、住を支えてきた「森(森林空間・里山空間)」をいかにして持続可能に利用していくかを考え、行動していける人間を育てていくことがねらいのようです。
五感を通した森の体験から、森の動植物の生態、狩猟、林業、暮らし(衣・食・住・家畜など)、そして世界の気候変動や二酸化炭素のことまで非常に幅広いジャンルをカバーしています。
メッセージを伝える相手も幼児からお年寄りまで、そしてハンディキャップを持つ人から外国人まで、「すべての人」を対象にしているのも印象的でした。(すべての人を森とつなげることをテーマとした野外トレイルもありました)
伝える手法や現場も多種多様。
現場としては、森のようちえんや小学校の森林体験プロジェクト、環境教育センターや最長2週間のプログラムを提供する「青少年森の家」、はだしのトレイルから老人ホームへの出前プログラムまで。森林空間をありとあらゆる手法で活用して教育現場にしていました。
途中、「WaldBox(森の箱)」と呼ばれる教材を積み込んだトレイラーや、「WaldCar(森の車)」も目にしました。(WaldBoxトレイラーについては、州内の各行政区に1台はあるそうです)とにかく、森のことを伝えていこうというモチベーションの高さとシステムの素晴らしさに感心しまくっておりました。
手法をとってみても、トレイルや展示、ビジターセンターやプログラムなど入念に計画準備されたものから、今ここにある自然を使って、今目の前にいる人々に即興で伝えるものまで。たった10日間(正味8日間)で非常に多くの森林環境教育現場を訪れることができました。
ただ見るだけではなく、実際に子供達や学生と混ざって、時には子供達と生活を共にすることで、同じ目線で教育を体感することができ、学生たちにとっては即実践力につながるような刺激を得ることができたようです。
また、それぞれの現場で頻繁にフォレスターがそれらの教育を担っていたり、サポートしていたりする光景を多々目にすることができました。持続可能な森づくりのためには、森だけでなく、子供たちや社会をしっかりと育てていく必要性をドイツのフォレスター(フォレストワーカー)はプライドを持って実践していることが心に残りました。単純に、カッコよかったです。(ドイツでフォレストワーカーの研修受けたくなっちゃったほどです。)
つらつらと書きましたが、学生にとっても、引率した私にとっても、非常に多くの気づきや学びを得ることができました。今後はドイツと日本で連携しながら、森林教育プログラムを共同開発できそうな気も!?
というのも、今回素晴らしいプログラムの企画とホスト役(ドライバーまで)をしてくださったロッテンブルク大学のフックス教授と、Haus Des Waldesという森林総合教育センターのディレクターのライヒレ氏と最終日にアイデア出しをしていたのですが、同じ方向で世界を見ている同士のためか、アイデアがポンポン互いに溢れ出てきて、それはそれはワクワクな会議でした。
そのドイツのお二人をお招きしての贅沢なワークショップを11月8日に開催します。(しかも無料)興味のある方は是非ご参加ください。ワークショップ(分科会)のお知らせ:http://www.forest.ac.jp/abroad/jgfs2017s/
また、今回のドイツ視察ツアーの報告会を、近日中に開催する予定です。こちらは実施決定次第、お知らせしますね。
なんちゃってせんせい
萩原ナバ裕作