木工事例調査R5春③ 堀内ウッドクラフト、工芸技術所
木工やモノ作りの事例見学をする木工事例調査。今回は一泊二日の行程で関東方面に足を延ばしてきました。
その時の様子を、学生のレポートでご紹介いたします。木工事例調査の2日目は、本間寄木美術館の次に神奈川県の工芸技術所と堀内ウッドクラフトを訪問しました。
今回訪問した工芸技術所は、箱根寄木細工や小田原漆器をはじめ箱根小田原地域に根付く工芸技術や産業を残していくために設置された施設です。今回、堀内ウッドクラフトの堀内良一さんにご仲介して頂き、まずはこちらの施設で堀内さんの活動や地域の木工産業についてお話を伺いました。
堀内さんはこの地域の産業だった挽き物の職人として木工の世界に入り、その後独立して、堀内ウッドクラフトを設立されました。地域の企業や若手グループとも関わりながら、独自の作り手のお仕事をされる一方で、堀内さんの取組みの中でも大きな特徴となっているのがFSC認証木材の利用です。今回は、堀内さんにFSC認証※の取り組みや、ものづくりに対する考え方などをお聞きすることができました。
※FSC認証とは、適切な森林管理が行われ、それらの森林資源で製品がつくられていることを国際的なルールにのっとり管理されていることを証明する認証制度。森林管理では、生物の多様性、水資源・土壌等への環境影響のほかに、社会的・経済的側面の森林機能の維持を考慮している。
FSC認証は国内では、まだまだ一般にまで認知が進んでいるとは言えませんが、海外では既に、国から認証された木材を使わないと罰せられるような地域もあるそうです。堀内さんはFSC認証木材を独自のルートで扱っており、それにより当時、伊勢志摩サミットで使われた什器の木材を堀内さんが提供したことがあったそうです。堀内さんは今後見込まれるクリーンウッド法(合法伐採木材の流通および利用の促進に関する法律)の改正に伴い、日本初の新しいプロジェクト「FSC認証広葉樹材と神奈川県産未利用広葉樹材を扱う販売店」の準備を進めており、その展望についてお話を伺うことができました。
また堀内さんが作り手として意識されている、ものづくりに対する姿勢についてもお話を伺いました。堀内ウッドクラフトのラインナップには、寄木で作られたけん玉や病院で病児に治療の説明をするのに使われる「ぷれぱらウッド」などの、他所では見られないような視点で作られた製品があります。堀内さんは、ご自身の中に人と同じものが嫌だという気持ちがあるからこそ、人と違うものの価値を知り、自分の作る木工作品を必要としている人のために作る。というスタンスを持たれているそうです。自分の存在価値を確認したいという気持ちが、独自性のあるものづくりにつながっていることを知ることができました。
次に、工芸技術所の高橋秀人さんにご解説を頂きながら、様々な展示品を見学させていただきました。見学させていただいた資料室には、この地域で作られた数々の工芸品が並び、時代の移り変わりとともに発展していった職人技術を見ることができました。中にはかつて職人の方が使っていたろくろや木工ミシン(糸鋸盤)などをはじめとした道具類も保管されており、木象嵌などに見られる特殊な使い方も教わることができました。
施設内には木工機械も豊富に用意された工作室があり、地域の作り手がここを使って木材の加工をすることができます。制作環境によっては多くの木工機械を所有できないという作り手の課題を解決する、とても良い仕組みだと感じました。工芸技術所の見学では解説の言葉の端々からこの地域の職人の方々の結びつきや、伝統工芸を大切に守っていくネットワークの広がりが感じられたことがとても印象に残りました。
工芸技術所の見学の後、堀内さんの工房も見学させて頂きました。堀内さんの工房では、FSC認証材の管理の仕方や製作されている製品について説明して頂きました。
今回、私達へのご対応いただいた、堀内ウッドクラフト堀内良一さん(写真左)、工芸技術所の高橋秀人さん(写真右)ご多忙な中、貴重なお時間を割いて頂きありがとうございました。ここでの学びを今後の活動に活かしていきたいと思います。