木工事例調査 in 大阪 ~ナカジマウッドターニングスタジオ~
大阪、木工事例調査の報告、第2回です。
ウッドターニング、木工旋盤と呼ばれる木工のジャンルがあります。材料を回転する軸に固定し、くるくる回しながら刃物をあてて木を削る木工手法で、お皿やコマなどが作れます。指物家具などと比べて設備が少なくて済み、また、単純な技術で始められながらも実は奥が深い表現方法があり、近年愛好者が増えています。
今回の木工事例調査では大阪の松原市にあるナカジマウッドターニングスタジオを訪問し、代表の中島信太郎さんにお話をお伺いしました。中島さんの作品は有名なTV番組のセットにも使われており、実は見たことがある人も多いと思います。中島さんはご自身で作品を作るだけでなく、木工旋盤の教室を運営しながら旋盤の機械や材料の販売も行っている木工業界では珍しいビジネスモデルをとられている企業です。そこに至るまでの苦労や挑戦、そして将来のことを、真剣に率直に、時折冗談を交えながらも楽しく語っていただきました。
今回私たちが見学させて頂いたのは、モダンなつくりの二階建ての事務所兼工房です。一階が工房になっており、そこには私たちが見たことのない旋盤機械が何種類も置いてありました。ツールは自社オリジナル品もあり、もちろん販売可能とのこと。そして私たちが訪問した時も教室に通う生徒さんが旋盤加工をされていました。
お話をお聞きする中で、特に印象に残った言葉がありました。
「木工に関して、商品として売れるものは必ずしも製品(作品)だけではない」木工旋盤を軸に、教室や道具、材料の販売など多角的に経営をされている中島さんだからこそ言える、強い説得力のある言葉でした。今回はそのうちのひとつである旋盤教室をどのように運営されているのか、掘り下げてお聞きすることができました。
中島さんが旋盤教室を運営する中で、生徒さんたちから「中島さんから道具を買いたい」「信頼できる人から買いたい」というニーズが出てきたそうです。
中島さんが大切にされていたのはコミュニケーションをとること。中島さんはスタッフの方々にも生徒さんとのコミュニケーションを取るように伝えているそうです。生徒さんにとって本当に必要なモノをおススメするために、生徒さん自身でも気づいていないようなニーズを対話を通して把握することが大切だと仰られていました。
森林文化アカデミーでも「伝える」ことを一つの大きなトピックとして学んでいます。今回、改めてそれを商品として売っていくことの難しさや可能性を感じることができました。木のある暮らしを求める人々は確かにいて、そのニーズは何に由来しているのか、という視点を持って事業を進めていくことは、今後どのような業界に進んでも大切な事であると感じました。
今回、中島さんから逆に学生への質問もありました。自己紹介とともに将来について話す学生の話を、メモをとりながら聞いてくださり、一人ひとりにお言葉をくださいました。最後の「うん、みんな大丈夫!」との一声で、一同勇気づけられると同時に身の引き締まる思いでした。
そして最後に記念写真を撮って頂き、終始楽しく、ありのままの言葉ですべてお応えくださり、多くの視点から学びを得ることができました。中島さん、このたびは本当にありがとうございました。
文責 森と木のクリエーター科木工専攻(2年)久保遼一、寺島壮一、畑山沙織