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2025年02月08日(土)

木工事例調査(材料購入編) ③奥飛騨開発

 雨もほぼ上がり、木工事例調査3か所目の奥飛騨開発株式会社に到着した時、重機で原木がどんどん運ばれる中、従業員の方々がキビキビと働いている姿が目に飛び込んできました。『これが土場か…』と感心していると、重機からひらりと降りて、木材部の堀口清憲さんが我々を出迎えてくれました。

奥飛騨開発

 奥飛騨開発は、鉄道の枕木に使うクリなどを主に扱う事業から会社が起業され、今では広葉樹の伐採から素材生産、製材、原木販売まで行っており、今回は宮川沿いにある「中間土場」という場所を見学させてもらいました。

 敷地内には原木を積み上げた山がいくつもあり、その樹種はミズナラやブナを中心に、ヤマザクラ、イタヤカエデ、キハダ、トチノキ、オニグルミ、ミズメなど20種以上あり、中には市場にほとんど出ないようなアズキナシという珍しい樹種も仕分けされており、我々に見学させてくれました。また、林業専攻の2年生が活用について課題研究で取り組んでいて、購入を希望していたヤマハンノキも、3本ほどゴロンと原木を選別して用意されているなど、そのきめの細いニーズ対応の姿勢が印象的でした。

堀口清憲さん

 このように多種多様な広葉樹が用意できるのは、社内の林業作業班が荘川や飛騨市などの契約した山林を皆伐したり、飛騨高山森林組合や近隣の森林組合から持ち込まれたりした材の集積地となっているからだそうです。

 顧客の様々なニーズに応えて多種多様な木々を生かしているのが良く分かるのが、ナラ材とサクラ材の事例です。「椎茸の菌床チップ」は主にナラ材をチップにするそうですが、その際、サクラを混ぜてはいけないとのこと。なぜならば、サクラは椎茸の生育を阻害するからなのですが、別の顧客からは、燻製用のチップをサクラに限定してお願いされることもあるそうで、正に適材適所。それを可能にするのは

「ここに来た原木は100%生かしたい。」

とおっしゃる堀口さんの信条なのだなと思いました。ここ1年間、山から運ばれてくる樹木は取り扱いが難しいものが増えているそうですが、

「普通なら『ダメだ』と廃棄されてしまう木ほど自分は好きなんだ。」

と破顔一笑なさって、

「自分の所で菌床のチップとして加工すれば何とか道は開ける。」

と最後の一本まできちんと生かそうとする工夫と情熱には頭が下がる思いでした。

 

 個人的に、「ミズキ」で木工作品を制作したいのだが…と堀口さんに聞くと、

「1本だけありますよ。」

と案内してくれました。原木は初見でびっくりしていると、

「皮の匂いで識別するんですよ。」

と教えてくださり、やはり東北地方などのほうが本場なのですか?と尋ねると、

「飛騨地方より群馬や神奈川などからのほうが良いミズキが出るかな。」

と全く知らなかったことまで教えてくださいました。これは自分だけでなく、同級生の様々な質問にも、豊富な経験と知識で大変興味深く答えてくださり、とても勉強になりました。

 

 トラックに原木を積み込む作業が最後のクライマックスで、堀口さんが重機の先端のハサミをまるで手指のように扱い、重い原木を荷台に一本一本収めていく様は圧巻でした。

 堀口さんをはじめとした様々な木材生産に関わる方々の知恵と努力によって広葉樹が生かされていることを、今後木工作品を制作する際には忘れずに、よりよい作品作りで応えていきたいと思いました。

重機で丸太を積み込む

クリエーター科木工専攻1年 ベケット・リンド、橘 明広  林業専攻2年 梅村 成美