【収納家具2023演台製作(1)】材料編
今年度2023年の収納家具は、アカデミーの情報センターで入学式、卒業式などの式典、その他のイベントなどで様々な利用をされる演台製作を行いました。
もともとシンプルな形のものはあったのですが、よりアカデミーらしいものをという要望もあり、県産材、地域材活用を象徴するものとなるようにデザイン、製作を進めていきました。使用した材はアカデミーの連携市町村でもある飛騨市で古川町黒内の民有林から伐採された小径広葉樹です。昨年2022年の12月に原木を選び、製材、乾燥を経て4月からの授業で使わせていただきました。
通常は乾燥材として利用するためには、伐採、製材後に最低1年ほど桟積みをして天然乾燥させたのち、2週間ほどかけて人工乾燥機で含水率を下げていく必要があります。飛騨市では天然乾燥をせずに、製材してすぐに人工乾燥機へ入れ、数週間で乾燥材にするという短期乾燥の技術開発に、地域おこし協力隊として活動されている広葉樹コンシェルジュの及川幹さんを中心に取り組まれています。
晩秋に伐採し、製材した材を翌年の4月に使うというのはこれまでの流通サイクルでは通常できなかったことです。伐採からの期間が短くなることで、在庫として抱える材を少なくすることができます。また、天然乾燥も含めて1年半後と言われると、購入する側も仕事の計画が難しいですが、半年程度であれば、見通しも立ちやすいと思います。コスト面や、品質など、クリアするべき問題もあるかと思いますが、地域材利用の強みの一つになる取り組みだと思います。
その短期乾燥技術は現段階ではまだ本運用ではなく試験段階ですが、今回の演台製作では材の使用感の評価をするということで、試験材を使わせていただきました。
ちなみにこれまで飛騨市には西野製材さんという広葉樹専門の製材所がありましたが、様々な取り組みにより飛騨市の広葉樹の需要が高まり、生産量も増えてきて原木も集まっているのに、西野さんのところだけでは製材が間に合わないという状況になっていたそうです。
そこで飛騨市広葉樹活用推進コンソーシアムが新たな広葉樹専門の製材所を2023年7月に稼働開始し、先程ご紹介した広葉樹コンシェルジュの及川さんが中心となり運営していくことになりました。コンソーシアムの会長でもある西野製材の西野真徳さんなどのバックアップもあり、順調に稼働していっているそうです。
これまでは充分に使えるサイズでも製材、乾燥などの体制が整っていなかったために家具用材として使われてこなかった広葉樹がたくさんありました。飛騨市のこういった取り組みが全国に広がり、活用される地域材が増えていくと、良い循環の広葉樹林森も戻って来るのではないかと思います。
さて、演台製作に話を戻しますが、実際の製作の中で小径広葉樹を使うためにいくつかの工夫をしました。製作の様子は次回(製作編)でご紹介します。
木工専攻教員 渡辺圭