木工事例調査R7冬④ kiond
木工やものづくりの事例見学をする木工事例調査。今回は1泊2日の行程で、三重県へ行ってきました。その時の様子を森と木のクリエーター科木工専攻の学生がレポートで紹介します。
2025年冬の木工事例調査。2日目の午後に訪れたのは三重県多気町の商業施設VISON(ヴィソン)内にある、木と森をテーマとする体験・体感型施設「kiond(キオンド)」さん。
kiond kiondひろしま 営業企画マネージャーの上長野ゆみさんにご案内いただきました。
Kiondさんでは子どもたち向けのプレイグラウンドやプログラムだけでなく、大人にこそ木育を、との思いから、初心者向けは勿論、外部講師を迎えて行う本格的な木工プログラムや、森や川でのアウトドアアクティビティなど、多様なプログラムが体験できるようになっています。
まずは施設全体を見学させていただきました。
施設に入ってすぐのショップには日本各地の作家さんやメーカーから厳選した木製品が販売されています。
ショップ奥の壁面には木、森、アウトドアなどに関する書籍が並んでおり、併設のカフェの珈琲などを楽しみながら、自由に手に取って読めるようになっています。
森でのプログラムでは植物の植生などについて参加者に細かく説明はしなくてよいとスタッフさんに指導されているそうです。それよりも発見した喜びや「よく見つけたね!」と共感することをまず大切にし、参加者が見つけた植物や虫などを自発的にこの本棚の本を開いて調べるように促すことで、スタッフから説明されるよりも記憶にも残りやすく、学びを持ち帰ってもらうことに繋がるようにと工夫されていました。こういったアプローチは他のワークショップ等にも応用できるなと、私自身の学びにも繋がりました。
続いてはプレイグラウンド「キノパーク」エリアへ。
象徴的な木のジャングルジム「モッキンガム」は、建物自体の構造体を利用し造られています。この部分だけでなく、施設内では構造体の柱などが露わになっているところが多く、そのまま棚に利用されていたり、床は尾鷲ヒノキがふんだんに使われていたりと、触感や視覚から木のぬくもりや経年変化が感じられるような作りとなっていました。
キノパークに置いてある木のおもちゃには作家さんのキャプションが添えられており、お子さんが気に入った場合には後々ご家庭で調べて購入してもらえるようにと、細かい点にも工夫がなされていました。これは作り手側からしても有難い配慮ではないかと思います。
キノパークの後は、木工房やワークルームをご案内いただき、具体的にどのようなプログラムが行われているのか、また、どのような設備や道具が揃っているのかを見学しました。
ずらりと並ぶ木工旋盤などの本格的な木工機械、整然と整理された道具、そして準備された材料の数々に、学生たちから感嘆の声が漏れていました。
個人的に気になったのがプログラムの名前の付いたファイルでした。中を見せていただくと、毎回のプラグラムの報告書に加えて、それぞれのプログラムの手順や必要な道具が写真付きで細かく整理されており、複数人いるスタッフ間でできることに差があっても、この手順書でその差が埋められ、情報共有やプログラムの改善にもとても役立つものだと感じました。自分が今後何らかのプログラムを主宰するような立場になった場合は是非参考にさせていただきたいと思います。
最後に、上長野さんご自身とkiondoの立ち上げからのお話、そして今後取り組まれたいことについてお話しいただきました。
余談ですが、上長野さんのお話が本当にお上手で、立て板に水とはこのことだなあ…と感銘を受けました。本当はこのレポートに書きたいことは沢山あるのですが、際限が無くなってしまうので、お話しいただいた中から特に私が共感する部分について抜粋して綴ろうと思います。
木育事業に取り組まれる中で上長野さんは「様々な活動が行われている中で、その活動が本当にきちんと価値をつけて山に恩返しになっているのか?」ということに疑問を持たれたそうです。そして木育について調べる内に、色々な企業や団体がワークショップ等をやっているものの「子どものための教育」というのが中心になっている事が多く、結果として親(大人)には届いておらず、補助金ありき、団体や講師のボランティア精神、やりがいで成り立っているという部分が大きく、陰で我慢している誰かがいるという実情に対して本当にそれで良いのか?と考えられたとのこと。
お金の話はネガティブなイメージになりがちな部分もありますが、やりがいやボランティア精神だけでは川上〜川下に携わる人々の生活が成り立たなくなってしまいます。山にきちんと還元していくには、活動をビジネスとしてしっかりと成り立たせなければ持続していきません。そこで上長野さんは「全世代、全ての人に日々の暮らしの中で木育や自然にどの様な恩恵があるのか認識してもらう」、「木を使うだけでなく山に返せるまでの仕組みを作る」、「補助金やボランティア任せではなく、きちんと事業にする」ということを<当たり前にすること>を指針として様々な取り組みをされています。
その一例に、
・講師の方と金銭面の協議を行い、利益率の独自の計算式に当てはめて計算し、適正な価格でやりとりをする。
・ワークショップに参加されるお客様について、事前に伐採〜ワークショップの材料になるまでにかかる時間や手間をきちんと説明する。
といったことをされていると教えていただきました。
私は友人のフェアトレードのお店を手伝っていた経験から、日本国内の様々な製品の適正な価格というものに関心がありました。アカデミーで木工を勉強する事になってからは特に木製品の適正な価格というものを考える事が度々あります。木製品だけではなくどんな物にも言えるのですが、目先の安さに囚われた消費行動は巡り巡って自分たちの首を絞めかねない気がしてなりません。
ですがこの世の中、価格の安さでモノを選ばないと生活に大きく影響するということも身に沁みてわかります…。その中で川下側となる私たちは作り方や売り方、ユーザーへの伝え方を工夫し、川上〜川中へきちんと還元できるようにしないといけないなと、今回の見学を通して改めて感じました。それをどんな手段で実現していくのか、残りのアカデミー生活を通してきちんと考えていきたいと思います。
上長野さん、今回はお忙しい中とても濃い時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました!
森と木のクリエーター科 木工専攻1年 浅野 由佳梨