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2025年04月04日(金)

木工事例調査R7冬② 武田製材

木工やものづくりの事例見学をする木工事例調査。今回は1泊2日の行程で、三重県へ行ってきました。その時の様子を森と木のクリエーター科木工専攻の学生がレポートで紹介します。

 

武田製材

 風光明媚な尾鷲市を後に、事例調査2か所目は大台町の武田製材所に訪問させていただきました。到着するとすぐに、武田誠さんが笑顔で出迎えてくださり、早速白黒写真を見せてくれて、「ここから500mくらい山の方で撮った大正から昭和の頃の水車小屋近くの写真です。」

と説明してくれました。創業は昭和初期の祖父の代。武田さんが小さな頃までは自転車でちょっと行った所のクヌギ林でカブトムシが飽きるほど捕れたり、赤や黄色の色とりどりの紅葉が美しく秋の山を彩っていたりしたそうですが、小学校の時にそれらは全部伐採され針葉樹の緑一色になった…思えば昭和の拡大造林の時代だったと振り返りながら、お父さんの代は針葉樹中心に梱包材やパレット、建築材の製材を進めていたことやベイマツなどの外材から国産の杉に転換していったことなどをお話してくれました。訪問した全員が尋ねたかった「広葉樹に特化した製材をなぜ始めたのか?」という問いに対しても、

「元々広葉樹には興味あり、10年くらい前に『アルガ建具店』の製品を見てインパクトを受けて、完全にスイッチが入ったのは奈良県にある『徳田銘木店』に行った時ですね。それから何回も通いました。」

とおっしゃり、木々の多様な世界に魅せられながらも、ふと

「広葉樹は『高級建築材』か『銘木』としてしか扱われていないのではないか…。」と気づき、

「それ以外の広葉樹の活用の道を切り開くことで勝負しよう!と決意しました。」と明るく答えてくれて、林業全体を俯瞰しながら、柔軟に発想することの大切さを教えてくださいました。

 製材した木々は、北は北海道から南は沖縄の石垣島まで。森林組合や造園家、果樹園、そして特殊伐採の知らせなどアンテナを張り巡らせて樹木伐採の情報をつかみ、ありとあらゆる樹種を仕入れているそうです。

「色んな所へ行って、色んな人に出会うことが一番楽しいです。」

とおっしゃりながら、そばにある製材途中の木々を指さし、一つ一つ面白エピソードを交えて解説してくださる武田さんは、本当にあらゆる樹木が好きなのだな…と思いました。しかも、お話だけでなく、実地に株切りした丸太から板材に製材する過程や、ベルト状になった製材機専用のノコギリ刃を目立てする機械まで動かして見学させてくださり、「庭木の製材が最も面白い。」「鋸刃にとってトリモチの原材料になるヤマグルマが一番厄介」など、話題が尽きません。

 さらに驚くなかれ、工場見学を一通り終えた所あったテーブルの上には、いくつもの珍しそうな樹木の材が並べられており、おもむろに「問い合わせナンバー・1の木は何でしょう?」と興味津々な樹木クイズが始まったのです!答えは「ヒイラギ」でした。なぜならば元々魔除けや数珠に使われており、アクセサリー作家が求めたり、「柊」という名前の人気が高かったりするからだそうです。

 さらにテーブルには結婚式の美しい「ウェルカムボード」がありました。こちらはヤマモモを用いたもの…ということでこのように、広葉樹を利活用した実践を武田さんが教えてくれたのです。さり気なく広葉樹を工夫して加工すれば付加価値が数倍高まる例を示しながら『あっ!』と驚く広葉樹利活用をいかに事業化するか…その発想方法まで教えてくれるサービス精神に、感服しながら、「私の推しの木!」「3大ポイズン樹木とは?」など樹木の奥深さと面白さをアカデミーの見学者全員で再認識させてもらい、皆笑顔になっていました。

 ここまででも十分有意義で楽しい訪問でしたが、クライマックスはここからでした。武田さんは、「やっと整理がつき出したんですよ。」と笑いながら、左奥の倉庫の大きな戸を開けてくれました。

『木の図書館』!が現れたのです!

 全員、圧倒されながら、一枚一枚棚から材を引き抜くと、お馴染みの木だったり初めて目にする樹木だったりして、気づけばアカデミー生は全員、夢中で棚にかじりついていました。神代ナラを見つけ驚喜する者、これまでの制作で度々美しい杢を見出したトチを嬉しそうに取り出す者、岐阜で待っている友達のために市場にはほとんどでない果樹材をほくほく顔で集めた者、そして今まで聞いたことがなかった「ナナミノキ」という材を知り新しい縁をつないだ者…。それぞれの個性がそのまま譲ってもらった材に表れていました。

「このような施設が各地に出来て、木材ツーリズムの『つながるような流れ』ができることを望んでいます。」とおっしゃる武田さんの言葉を聞き、確かにひとつの材が縁をつなぐこともあり、「木材ツーリズム」の可能性を確かに感じながら、手にした材を見つめ直しました。

 予定時刻をかなり超過してもまだまだ名残惜しかった武田製材所への訪問。武田さんの樹木に対する熱い思いに打たれました。と言っても、ただの感動家で終わるのではなく、武田さんの経験に裏打ちされた製材技術と知見を折に触れて想起しなければならない…と思いました。一つ一つの材を語る武田さんの言葉の端々に、森林に関わる方々との縁を大切にしている姿勢がうかがい知れました。また、創意あふれたアイデアを製材所経営にどんどん生かしている姿は、「憧れ」から一歩進んだ具体的な経営者像となりました。木工専攻の学生としては、武田さんのように明るく、アイデア豊富に広葉樹を生かしながら、木工作品を創意工夫して制作するなど、広葉樹の利活用について考え実践していきたい…と思いました。

(文責 森と木のクリエーター科木工専攻1年 橘 明広)