アカデミーのもの作りは木を切るところから『広葉樹の簡易製材と木材乾燥』
林業専攻と木工専攻の1年生の選択科目である、この授業。当たり前ですが、木で物を作るためには、どこかから木を切って持って来なくてはなりません。近年、もの作りの仕事の中で地域材や記念樹など、立ち木の状態から「何かを作って欲しい」という相談を受けることが増えてきています。
そんなときに、ここからここまでは作り手ができる仕事。ここから先は業者に頼るところといった、線引きができる必要があります。この実習では、立ち木を伐採するところから、材の運搬、乾燥作業のところまでの体験を通じて、立っていた木を、もの作りの材料として使うために必要な作業について学びました。
今回の実習地となったのは、岐阜県関市にある岐阜県百年公園です。園内の整備のために切らなければならない木があったため、これを切らせて頂きました。
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まずは切るための準備から
今回は公園のしかも、整備された広場での伐倒作業ということもあり、木にアクセスするまではとても楽ちんな現場でした。それでも、木を切るにあたっては、周囲の公園設備や他の木にぶつけて不要な枝を折ったりしないよう、細心の注意が必要になります。
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杉本先生の指導を受けながら追い口を切っていきます
伐倒方向を決め、木にワイヤーをかけ、チルホール(牽引具)を使って目標の方向に引っ張りながら木を倒します。この日切ったのは、根元の直径が40㎝ほどのケヤキの木でした。
無事に切り倒してからも、枝葉の片付けや丸太の玉切り、トラックへの積み込みなど、できるところはほぼ全て人力で行います。ロープを使ったり、作業手順を誤らなければ、意外と人の力でも、大きな丸太を運べることを体験しました。
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ロープを使って丸太を荷台に上げます
午後からは場所を変えて、さらにもう2本のウワミズザクラを切りました。広葉樹は建材用途に育てられた針葉樹とは異なり、縦横に枝木を伸ばして育ちます。そのため、木の重心がどちらに向いているかが読みづらく、思い通りの方向に倒すのは難しくなります。チェーンソーを担当した学生は教員からの指導を受けながら、慎重に作業を進めていました。
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伐倒後に作業のポイントを伝える塩田先生と学生
伐った木は、この後に学校に持ち帰り、木工の実習に使うために製材を行いました。
アカデミーには、木工や林業専攻の学生が自前で製材をすることができる簡易製材小屋のCobikiがあります。ここに設置されている簡易製材機は、教員達が自前で組立てて運用している物ですが、これでも直径60㎝を超えるような丸太も悠々と板に挽(ひ)くことができます。
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今年度は大活躍のCobikiの簡易製材機
今回切ったケヤキの一部は80㎜程度の厚みに製材して、来年度の木工旋盤の授業で「お椀」を作る材料として乾燥させることにしました。このような厚みの板は材木店では販売されていないため、通常であれば割高な板になります。しかし、製材からモノ作りができることで、材料の選択肢を大きく広げることができるのです。
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板にした後は虫がつかないように皮むき。これも手作業。
材料となる木材を得るためには多くの労力と工程が必要になります。この実習を体験すると、学生は一様に「材料は大切に使わないといけない」という感想を口にします。当たり前のようなことで、前からも同じようなことを口にしてはいたのでしょうが、言葉の重みが体験を通じて変わってきます。
今回切って、製材した材料は、今度の夏が過ぎた頃には家具作りにも使える状態まで乾燥する見込みです。自ら切った木を使い、ものを作る体験を通じて、木を大切にする作り手や森の担い手になっていってもらえたら良いなと思います。
伐採から製材までの動画です。伐倒シーンなどこちらからご覧ください。
木工専攻 准教授
前野 健