【授業報告】家具の製作
家具のデザインと設計の授業の後、書棚の製作を行いました。
材料は昨年製作した演台に引き続き飛騨市の小径広葉樹を短期乾燥した材で、樹種はブナ、キハダ、ウダイカンバ、ホオノキです。
雪が降る1月下旬に原木から選ばせていただき、製材、乾燥を経て3月末に材を引き取りに伺いました。
原木から乾燥材の受取まで、2ヶ月というのはこれまでの乾燥スケジュールからすればありえない早さです。これまでは一般的には人工乾燥をする前に、最低1年は天然乾燥の期間が必要でした。
コストの問題や材の品質面など、考慮すべき事柄はたくさんあるとは思いますが、製作者が原木の選別から関わることができ、この材をこの家具、もしくは内装のこの部分に使いたいと製作のサイクルに無理なく組み込むことができる短期乾燥材のプロジェクトは、製作者、顧客にとって材料を選ぶ際の新たな選択肢の一つになりうるトライアルだと思います。
アカデミーと連携協定を結んでいる飛騨市の及川幹さんを中心にこの短期乾燥材のプロジェクトは進められていましたが、試験期間を終え、今後は実用化に向けて準備されています。ちなみに地域おこし協力隊で活躍されていた及川さんは、この5月にやまかわ製材舎を立ち上げられています。広葉樹活用を進める飛騨市で、大きな流れを作っている中のお一人です。今後の展開もとても楽しみです。
今回使用した材は、あえて小径の癖のある材を選んでいるということもあり、正直なところやはり家具用材としては使いやすいものではありませんでした。特にブナ材は、反りも大きく、真ん中で一度割ってから矧ぎなおして使うなど、工夫をしないと厚さを確保できず、鉋仕上げにも苦労しました。
ただ昨年度の演台製作で天板に使った同じく飛騨市の短期乾燥材のブナ材はそこまで大きな反りもなく、使いやすかったので、同じ飛騨地方のブナ材だとしても、個体差が大きいと感じました。
その他、ウダイカンバ、キハダはとても素直で加工もスムーズでした。
ホオノキは狂いにくい特性を活かして引き出しの材として使用しました。
取っ手は前の先生がオリジナルのものを製作予定で、仮のものが付けてあります。小径木利用を象徴するものとしてかなりインパクトのある節を前板に残しました。
もともとあったスチールの棚を撤去して、出来上がったものと入れ替えます。
製作前に前野先生から出された要望をうまく反映した、使いやすい棚になったかと思います。作りにくさはあるものの、小径木でもいくつかの工夫をすることで個性的で魅力的なものになります。つくり手としては、手がかかるものほど愛着が湧くものです。手をかけて丁寧に作られたものは、使う側にも伝わるものだと思います。
今回は、使う材の厚みがすでに決まっていたり、初めて作る収納家具なので、シンプルな板組の構造にしたりと家具のデザインと設計で学んだことを直接的に反映できたとは言い切れないですが、一連の講義、見学、製作を通して様々な工法やデザインがあることを実感してもらえたのではないかと思います。今後の家具製作に活かしてもらえると嬉しいです。
木工専攻教員
渡辺 圭