機械加工の基礎を学ぶ「木工機械使用法2」
先だって、木工機械使用法1の実習で木材の木取り(指定の幅、厚み、長さに板を加工すること)を学んだ木工専攻の学生が次に取り組むのは、製品カタチを作る「加工」の実習です。この課題ではフォトフレームを実際に作りながら機械加工の基礎を学んでいきます。
まずは木取りの作業から。
フォトフレームでは、細い長い材を4本組み合わせて製品を作ります。この4本はそれぞれ木目、木地色が似通った材でないと製品になった際に不格好に仕上がってしまいます。学生たちはまず、それらを考慮しながら、効率的に無駄なく材を切り出す方法を学びます。
手前と奥は厳密には違う機械ですが、昇降盤と呼ばれる木工では一般的な加工機械です。取り付ける刃の種類を変えることで、これ1台で様々な加工ができます。上の画像では、安全性と加工精度を出すために「板羽根」と呼ばれる補助具を用いて作業をしています。
今回のフォトフレームは木の端を45度(とめ)に切って接合します。
この45度のカットはノコを傾斜させて行います。この加工には高い精度が必要です。
タイミング悪く、この時期は梅雨真っただ中。
梅雨は湿度の変化が激しく、木は外気の影響を受けて伸び縮みをします。板を変形させたり反らせたりしないよう、板の養生管理にも気を配っての作業になりました。
木取りの際に色味が合うよう、フレームの長手(長い方の部材)と妻手(短い方の部材)はペアで木取りしています。
それを似た物どうし組にすれば1つのフレームの材料が揃います。ちょっとのことですが、4つのバラバラの材から色合わせをするよりも効率的に作業ができます。
ペアが決まったら、いよいよ組立てです。
加工の精度が出ていれば、それほど締め付けなくとも四隅はぴったりとくっつきます。今回の加工精度は・・・まずまず、といったところでしょうか?
ボンドが乾いたらバンドを外し、補強のサネ(かんざし)を入れるための溝を突きます。
サネをカドに差し込むと、まるで頭にかんざしを挿したようにも見えます。そのため、「かんざし」とこのサネを呼ぶこともあります。サネの嵌め合いは硬過ぎず、緩過ぎずを目指しますが、今回は一部緩いものが出てしまい、危うく数が足りなくなるところでした。予備の必要性、アクシデントの要因項目もこんなところから学びます。
サネをの余分を切り落とします。
今回は少し数が多かったため、即席で治具を作って作業をしました。治具とは作業の補助具のこと。これは基本的に作り手が自作します。治具は作業の安全性を高めたり、加工の精度・効率を上げるために無くてはならない物です。反面、治具自体は製品ではないため、手間やコストをかけすぎてはいけません。
まだ学生達で考えて自作するというのは無理ですが、たくさんの治具を見て、使うことを繰り返して、身に付けてもらいたいスキルです。
小さく残ったサネの目違い(切り落としで残った段差)をベルトサンダーで削り落とし
金具をネジ止めするための下穴をあけ
手磨きと面取り、検品をします。
検品は自分の目だけでなく、チェックの担当者を決めてダブルチェックをします。そうすることで品質のばらつきが無くなり、数が増えても同じクオリティを保つことができます。
今回使用した材は白い色がきれいなトチのため、あまり色合いが変わらないよう蜜ろうワックスを塗って仕上げました。完成したフォトフレームは自分で使う物の他に、日独シンポジウムの記念品としても製作しています。数をある程度まとめて作ることで実現する学びもまた多くあります。安全作業の勘所とモノ作りの勘所を実習を通して身に付けていってください。
木工専攻 講師
前野 健