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2023年12月26日(火)

高知縦断 木造建築視察(前編)

この度12月13日より、高知県立林業大学校様と協同で設計ワークショプ兼高知県内の視察に行って参りました。

 

このワークショプは毎年実施しており、

昨年度はこちら美濃市へお越しいただいていたので、

今年は森林文化アカデミーが高知林業大学校様へ伺うこととなりました。

 

移動距離は美濃市から最初の視察地までおよそ460km、私個人初めての高知県でした。

山間部は急斜面で緑に溢れており、さすが森林率がNo. 1な都道府県だけあります。

 

まず初めに訪問させていただいたのは、

【かたつむり山荘(山本長水設計 風憬舎改修)】

1969年に竣工し、その後1988年移築された建物です。

スギ・ヒノキの間伐材を丸太材として活かした構造が特徴的。

柱や梁だけでなく垂木も丸太で構成されており、丸太のため継ぎ手を設けないようそのどれもが一本の長い材であるため、力強くも落ち着く大きな空間となっており、中でも一本の柱に集まる垂木は印象的でした。

丸太材の垂木

私達は自力建設プロジェクトの中で木材の刻みを経験しましたが、丸太材の加工は施工難易度が非常に高く、改めて大工さんの技術の素晴らしさを感じる建築物でした。

 

【大豊町立大豊学園(艸建築工房 設計)】

CLT材の活用に精通しておられる艸建築工房様設計の建築物です。この建築物には随所に子供の学びの環境に配慮した設計がなされており、その細やかなデザイン力の高さが印象的な建築物でした。

CLTの貫とCLT材の合わせ柱

貫をCLTの柱材でサンドしています。

輻射熱式の冷暖房機具

心地よい暖かさの感じられる空間でした。

階段スペースに設けられた腰掛けられるスペース

階段下のスペースを活かした空間で腰掛けて子供等のコミュニケーションが生まれる場所になりそう。

空間に広がりを感じさせる壁面の鏡

どこに鏡が使われているかわかりますか?

鏡の配置が絶妙でその先に空間が広がっていると思わず錯覚させられました。

目線の通る下駄箱、

登校時にもコミュニケーションが生み出される工夫がなされていました。

 

初日最後の訪問先は、

【高知県立林業大学校(細木建築研究所 設計)】

到着時既に日没後のため外観写真が取れず…

 

まず目に入ったのが駐輪場。

以前私が授業内で設計した木造カーポートと同じくV字の柱が採用されており、

どのように成立させておられるのか思わず写真を撮ってしまいました。

柱脚部は鉄製のプレートで基礎と構造材を接合させているようです。

またプレートが地面との距離を確保する役目を持ち、

木材が地面から湿気を吸わないよう工夫されていました。

2F床のCLTスラブの断面

この建物はCLT工法と在来工法が採用されている建築物です。

多目的実習室の貫工法の天井

接合部がどのようになっているのか気になります。

 

以上、初日は移動も長く、視察時間の都合で少し急ぎ足の視察ではありましたが、

どれも特徴的な建築物ばかりでした。

 

2日目、【JR高知駅(内藤廣建築設計事務所 設計)】

高知県産材を利用したスギ集成材と鉄骨張弦材によるハイブリット構造の建築物。

大きなアーチを描く集成材は非常にダイナミック

対照的にコンコース内に設けられた待合室などの建築物は

鉄骨の直線を活かしたデザインとなっているのが印象的でした。

【桂浜公園 本浜休憩所(上田建築 設計)】

桂浜公園の本浜を眺められる絶景の場所に建てられた休憩所

砂浜から撮影した写真

建築物自体は現しのRC造、水平ラインの屋根とテーパーのかけられた軒裏の木材が

より水平ラインを強調しており、周りの風景に溶け込んでいる建築物でした。

 

 

【道の駅なかとさ】

こちらでは昼食に高知県産のカツオをいただきました。

道の駅の建物内は構造材が現しになっているところもあり、

あいがき(2つ以上の材を一部切り欠いて組子のように組み合わせるイメージ)の筋交耐力壁は

面違いを起こさないようにあえて面をずらしてあり、

そうすることで仕上がりと施工精度のバランスが担保できるよう工夫がなされていました。

【美馬旅館はなれ 木のホテル(建築設計群無垢 設計)】

四万十町にある美馬旅館のはなれ

道路に面する開口部は構造計算上含んでいないとのことでしたが、

試験的にラーメン構造の耐力壁が採用されており、

耐力壁でありつつも大きな開口が確保されている仕様は、

実用化されれば耐力壁と開口部のバランスの自由度が広がりそうです。

こちらの看板は電線の引き込みも兼ねており、

実用を兼ねたデザインが印象的でした。

 

【清水高校武道館(上田建築 設計)】

清水高校の武道館。重ね梁による圧巻の屋根架構、

木造フライングバットレス構造が特徴の建築物です。

どれも迫力がありながらもその空間に溶け込んでおり、

目線の高さや視野に占める面積によって印象に及ぼす影響は異なると感じた空間でした。

 

【海のギャラリー(林雅子氏 設計)】

RCの折板構造による建築物。左右の折板構造とその中央には階段とショーケースで構成されており、

建築物の名称通りその中に入ればまるで海の中から海面を見上げているような素敵な空間が広がっていました。

2日目も特徴的な建築物が多く、個人的にはラーメン構造の耐力壁は実用化できれば、

住宅に限らず開口部の自由度が高められつつも、

構造も担保できる建築物が提案できるようになれば、

私の出身地である土地の限られた大阪でも広がりのある空間ができそうと期待。

 

視察はまだまだ続きます。

今後の設計の幅を広げられるようしっかり空間を感じて学んでいきます。

 

森と木のクリエーター科 木造建築専攻1年 岩本