高山市 ぎふ木遊館サテライト施設構想プロジェクト
先日、中津川に続いて高山市にもぎふ木遊館のサテライト施設が整備されることが県より発表されました。
基本設計やコンセプトの立案は、木造建築専攻の小島、坂本、そして木工専攻の増岡の3名の学生と辻先生とともに提案させていただきました。
私は、光栄にも中津川、高山の両方に関わるというこれ以上ない経験をしました。
今回は高山について私たちが進めてきたことを、ご紹介させていただきます。
高山のサテライト施設は、「飛騨高山 森のエコハウス」という場所を改修して整備されます。
私たちはまず、現地を見せていただき、合わせて気密測定も行いました。
既存の施設は、2008年に環境省の施策として当時最新の設備を取り入れ、エコライフスタイルや再生エネルギーなどに配慮したモデルハウスとして、公募で設計者が20社選ばれ、全国に建てられたうちの1つです。
高山は、外壁にも木がふんだんに使われており、中は飛騨高山の匠の技術を生かした木組みがよくみえるつくりになっています。
現在はNPO法人飛騨高山わらべうたの会の方々が、普段から親子向けのワークショップを行っています。
そのため、施設の利用で困っていることや、子供の様子、安全面などの話をとても具体的に聞くことができました。
また同じ日、私たちは森のエコハウスのすぐ近くにある飛騨の里を見学しました。
サテライト施設の要望の中には、飛騨の里との連携もありました。
飛騨の里はいくつもの伝統的な古民家が展示されており、ほとんどの住居が室内まで見れるだけでなく、棟ごとにかまど、養蚕、縫物、一刀彫など高山の生活にちなんだ展示があり、設計のヒントをたくさん得ることができました。
私たちは提案の中で、高山の伝統的な屋台を模した遊具を検討していました。
そのため、高山の屋台会館の見学にも行きました。
高山の屋台とは、高山で毎年春と秋に行われる高山祭の時に曳かれる匠の技術を結集してつくれられている出し物です。
遊具としての屋台も、赤や黒を基調とした配色や、大きな車輪などの形を参考にしたいと強く思いました。
そして、プランを幾度か学内で先生とともに検討し、初夏に初めて現段階の案を森のエコハウスにて提案させていただくことになりました。
この日、美濃ではすでに35℃以上の気温でしたが、飛騨高山では、最近まで冷房のない家がほとんどだったらしく、森のエコハウスにも冷房がないことは驚きでした。
既存の暖房設備も壊れているため、設備の交換が必要です。
提案に関しては、事例調査や情報収集をとても丁寧にしてくださった増岡さんのおかげで、図面やイメージに実例を加えて分かりやすく伝えることができました。
わらべうたの会理事長の岩塚さんからは「私たちの夢が全部詰まっている」という温かい言葉をいただき、とても嬉しかったです。
修正の要望を後日伺い、大きな方針は変えずに進んでいきました。
そして約1か月後、高山市役所にて、高山市長と副市長にサテライト施設の計画を発表させていただきました。
会議室は大きな演台の周りにいくつものモニターがあり、慣れないマイクに向かって話すのはとても緊張しました。
発表を終えると、田中市長が「これは、とてもわくわくしますね。」と言ってくださり、緊張がほぐれて安堵の気持ちに変わっていきました。
このサテライト施設を拠点に、この地域をもっと盛り上げていきたいという市長や副市長の思いを聞き、周辺に配慮した設計の大切さを感じました。
大変お忙しい中、提案のために時間をつくっていただき、感謝の気持ちでいっぱいです。
また、後日私たちは学長にもプレゼンをさせていただきました。
私たちは、ダイアグラムとして既存施設の高さ方向を活かしたいという思いで設計を進めていましたが、学長の助言によりその層を次のようにすることとしました。
施設を下から高山の市街地、里山、乗鞍岳にみたてて、街、里山、岳エリアとします。
その中に、遊びの要素や活動の要素をちりばめていきました。
また学長には屋台の車輪の「まわす・まわる」行為の重要性や水車大工のお話もお聞きすることができました。
最後に、私たちの提案した案の一部をご紹介いたします。
まず、施設のコンセプトです。
このコンセプトは、
「施設が建ったときが完成ではなく、みんなで作っていく場所になるように。
高山の伝統的な屋台や山を模した遊具を子供たちがよじのぼる様子。
成長に応じて自分で遊具を選択し、挑戦する心を向上させる。」
これらの思いと、木が、上に上に枝を広げ大きくなっていく様子を重ねて、もくあっぷとしています。
既存の木遊館、morinosに続く「も」から始まる言葉と、morinosの「やがてみんなの森になる」というフレーズをオマージュし、考えました。
平面プランは次のように提案しました。(あくまでもイメージで、実際とは異なる可能性があります。)
メインのあそびばのイメージです。
また、外では「小さなmorinos」をテーマに、さまざまなプログラムが行えるように検討しました。外構の案は坂本さんを中心に考えていきました。
「食」のエリアと「遊び」のエリアの2つにゾーニングし、家庭菜園を使った食育講座や焚き火の体験をはじめ色々なプログラムが行えます。
デッキの部分はタープを張ることで、雨天時でも気軽にワークショップで使えるような拡張性も備えています。
以上が、高山市のサテライト施設構想計画の提案の一部です。
今後も多くの方々にいただいた意見をもとに、よりわくわくするような施設を目指して「もくあっぷ」のコンセプトのように、ステップアップしていけたらなと思っています。
中津川も高山も計画は始まったばかりです。今後の展開を、お楽しみに。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
木造建築専攻2年 小島亜素佳