大鋸を使って製材体験 (自力建設2022「丁稚基地」)
自力建設において、造作材の作製を行いました。
造作材とは建物内部の仕上げ材や取付け材のことです。
造作材の作製も軸材と同じく、製材と木取りを行い仕上げていきます。
小さめの部材はリッパーという装置で荒木取りが可能です。
太めの部材は製材機を使って荒木取りをしないといけませんが、大人の事情で製材機がしばらく使えなくなり、荒木取りが進みません。
その時、木工専攻の先生が大鋸(おが)を持っていることを思い出しました!
葛飾北斎「富嶽三十六景 遠江山中」で描かれている“あれ”です!
大鋸とは大型のノコギリで、その昔に製材に使われており、大鋸で挽いたクズが大鋸屑の語源です。
製材機が普及した現在ではほとんど使われることはなく、博物館級のノコギリです。
ですが、ここは森林“文化”アカデミー!
製材体験として使ってみようではないかと思いたちました。
木工専攻の先生に借りに行くと快く貸してくれましたが、その時「かなり大変だよ!」との一言。
一瞬たじろぎましたが、軽い気持ちで借りることに。
長さ2000 mm、梁せい240 mmの材を2つに製材します。
まず、ケーキ入刀ならぬ、大鋸入刀! しかし、普通の鋸と比べて刃が太くさらに一山が大きく、鋸が挽けない…。
やっとのことで挽き始め、少し進むと今度は鋸が動かない…。
材の内部応力で大鋸が挟まれて引くことも押すこともできない状態に。
挽いた後にくさびを打ち込み、切り口が閉じないようにしながら少しずつ進みます。
それも通常の鋸と比べて引く力が必要で全身を使って引いていきます。
そして、材を固定していないと挽く力で材が動いてしまうため、人が錘となって押さえました。
偶に軽い力で挽ける時もあり、その時は心地良い音と削り感覚でした。
いつも製材してくれている吉野先生と上田先生も大鋸は使ったことがないようで、楽しみながら手伝って頂きました。
代わる代わる全員で格闘すること3時間。
ある者は手にまめを作りながら、ある者は錘に徹して、ついに切断!!
最後にみんなで記念撮影。
今後の自力建設で一回は大鋸で挽くのも良い経験になると思いました。
皆で挽いた材は丁稚基地の正面入口の鴨居に使用しました。
大鋸で製材することを木挽(こびき)と言います。
製材終了後に、木挽に関する本「木を読む―最後の江戸木挽き職人」(1996年 小学館)を読み、大鋸は縦挽きノコギリと同じ原理であることを知りました。
刃は小さな鉋が多数付いているようなもので、その小さな鉋で削り取って挽いていくのが原理のようです。
そして本来は力を入れずに挽けるらしいです。
木挽の歴史から木の見立てや山のことなど、以前はもっと人と木や山が密接に繋がっていたことが書かれていました。アカデミーではそう言った繋がりも学んでいきたいと思います。
木造建築専攻 2年 杉山達彦