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2023年08月01日(火)

木造建築計画の基礎

木造建築専攻1年の専門科目「木造建築計画の基礎」。前期の授業が終わりました。

この基礎をベースに各項目をじっくり後期授業で学んでいきます。

この授業では、私がいつも実践しているパッシブデザインの10個のステップを学びます。

(座学のため授業写真をほとんど撮っていませんのでスライドの抜粋で紹介します)

ステップ1は、目標像を決めることです。
普段から気になっているキーワードを挙げていき、どのような住まいを計画したいかを言語化していきます。

設計者の想いが住まい手と共感できると計画がスムーズになります。

ステップ2は、計画地のポテンシャルをはかる「気候特性を読む」ことです。

ベースとなる気象庁のHPにアクセスして、気温や降水量、日照時間などを読み取り、どのようなポテンシャルがあるか分析します。

ステップ3は、より計画地に近づいて隣地の状況や敷地に落ちる影、地域の素材の特徴など「地域環境を読む」ことです。

現地調査や航空写真、過去の土地履歴からさまざまなことを読み取ります。

ステップ4は、住まい手の暮らしぶりを読みます。家族によっては寒がりでずっと暖房を使用していたり、お風呂が好きで給湯の使用量が多かったりと様々です。

暮らしに合わせた提案になるようにいろいろなツールを用いて住まい方を読み取ります。下図はツールの一つである「住まい調書」の一部です。

ステップ5は、いよいよプランニングです。

これまで見てきた気候特性や地域特性、暮らし方を総合して、計画を練っていきます。

空間の繋がりを立体的にイメージしながら具体的な計画に仕上げていきます。

ステップ6は、外皮の温熱計画です。

計画が出来上がるとどのような室内環境になるかを決める大切な要素である、温熱性能をデザインします。

温熱性能には、断熱、日射熱制御(日射遮蔽、日射取得)、気密、防露の4つがあり、どれも大切な性能です。

ステップ7は、設備を選定していきます。

エネルギー使用量の大きな用途から検討するのがコツです。

例えば下図は、温暖地で最もエネルギーを使用する給湯エネルギーの削減例です。従来型給湯器から太陽熱温水器や節水型水栓、断熱浴槽などを取り付けるとエネルギーが半減します。高効率エコキュートでも同等の効果があります。

このように、具体的な数値からどんな設備を選定するかを検討していきます。

ステップ8は、エネルギーの計算を行います。

エネルギー計算では、設備に加えて、床面積や温熱性能、居住人数等、さまざまな要素を勘案してエネルギー予測値や光熱費予測値を出していきます。

ここでは、下図のような独自のドリルを用いて、いろいろなパターンを計算して、勘所を身に付けていきました。

ステップ9では、環境性能の実測を行い、設計予測が正しかったかを確認します。

環境性能には、温熱性能とエネルギー性能があります。

例えば、温熱性能と暖冷房設備で決まってくる室内温湿度は、実測データを下図のような快適範囲にプロットすることで、適切に暮らしているかの確認ができます。

もし、予想より、寒かったり暑かったりした場合は、暮らし方が異なったり、施工不良があったりと可能性を予測できます。

最後のステップ10では、これまでのふりかえりを行い、総合的な視点でものごとを考えられるようにしていきます。

例えば、下図は、外壁を検討するにあたって何を配慮すべきか学生に項目を挙げてもらいました。30個近い項目が出てきています。

全て同じ重みで計画する訳ではありませんが、どれも大切な要素です。
これからの1年半以上の授業の中で、きちんと説明できる知識や計算できる技術をどこまで身に付けられるか、伸びしろが期待できます。

教授 辻 充孝