木造建築の現場(エンジニア科1年)
エンジニア科1年の「木造建築の現場」は、建築空間や素材を実際に体験することで、素材の見え方、感じ方、空間の広がりなど、木造建築の魅力を身体で感じてもらうことが目的の授業です。
まずは、これから2年間を過ごす我が校の校舎群から見て回ります。
この校舎群は、数々の建築賞を受賞した大規模木造建築です。
スギの格子が印象的な外観で緑に映えます。
材の断面は10.5cm角の小さな材です。これらを組み合わせて大きな規模(7000㎡程度)の建築群を作り出しています。
一方で雨仕舞が悪い箇所は劣化が進んでいるところも見ることができます。
木を扱う上でどのような使われ方が大切かをじっくり観察しました。
次に、学生が建設している自力建設も見ていきました。
雨模様の日でしたが、2021年度の「木立のこみち」のおかげでスムーズに移動できることを実感しました。
クリエーター科の木造建築専攻の学生が建設した自力建設群は小さいながらもアイデアのたくさん詰まった建築で、エンジニア科の学生も感心しっぱなしです。
後半は、今年度の自力建設「屋外階段」を自分たちで検討してみる課題をやってみました。
自力建設を見て回った効果か、防火壁をまたいで反対側に行ったり、駐車場側に滑り台を付けたりと、いろいろなアイデアが出てきました。
このように、自分たちでも考えてから自力建設講評会に参加していますので、いっそう熱心にクリエーター科のプレゼンを聞けたのではと思います。
最終日は、うだつの上がる町並みの建築群を見て回りました。
今井家住宅館長の古川さんがうだつの上がる町並みの歴史から今井家住宅の隠れた見どころまで丁寧に解説いただきました。
付け書院にある屋久杉の欄間に刻まれた三種の神器の一つ、八咫鏡(やたのかがみ)から漏れる陰影が壁に映し出されたり、ハート形の日本古来の猪の目型が灯篭に隠されていたりと、ぼんやりと見学しているだけでは気が付かない当時の人の遊び心が感じられました。
昔の煙突を明治時代に改修したトップライトからの光が季節によって入ってくる高さが異なる移り変わる状況など、興味深かったです。
また、うだつの上がる町並みには、古民家ホテル ニッポニア美濃商家町やあかりアート館など、アカデミー卒業生や在校生が関わった改修建物が数多くあります。
古い建物がこのように新しく生まれ変われるのも、木造建築の魅力の一つです。
建物を漠然と見るだけでなく、設計者やよく知る方から解説を聞くことで、より深く理解が進んだのではと思います。
これらの体験から、林業や林産業の職に就いた際にも、木造建築に関心を持ち、木がどのように使われているのかを考えるきっかけになったと感じます。
教授 辻 充孝