「美しい伏図を描いて木材を数え上げる」構造設計製図・木拾い術
「伏図」って聞いたことがありますか?建築に携わる人以外は聞きなれないと思います。
「伏図」は骨組みを上から見た図面で、木造建築ではとても重要な役割を持っています。
木造建築の基本は、柱と梁が見える「真壁造」です。
柱と梁が見えるということは、架構がそのままインテリアデザインということになります。
つまり伏図が美しくないと良い建築にならないわけです。大切ですね「伏図」!
山で大切に育てて、林業で大事に伐り出して来た材木を、壁に隠してしまったら、桧だろうと杉だろうと節があろうと無かろうと、強度以外はあまり関係ないことになってしまうので、アカデミーの自力建設は全部「真壁造」です。
もちろん壁で構造を隠しても美しい建築をつくることはできますが、先に「真壁」を学んでおけば後から隠す設計をするのは難しくないのです。
建築専攻1年生の授業「構造設計製図・木拾い術」では、美しい伏図を描けることを目指しています。
まず講義で架構についての基本的な知識を学びます。
柱って何のためにあるんだっけ?どこに置くべきなんだっけ?
梁の寸法はどうやって考えたらいいの?どう組んでいくとコスパがいいの?
などなど、木構造デザインの奥深い世界の入り口に立ってもらいます。
講義では、山の材料から設計できる知識を身につけます。
例えば設計する時に「長さ10mで30センチ角の木材が欲しいなあ」と思っても手に入りませんので、山にある木はどのくらいのサイズなのか、市場にあるのか、規格寸法はいくつなのか?製材機と乾燥機の大きさも重要です。
木造建築の設計者は「川上」「川中」についてよく知っておく必要があります。
例題の伏図から「木拾い」を行います。図面から120角が何本、240の梁が何本と拾い上げて、それを「120角の4m材が10本」というように材料の発注ができるスキルを身につけます。
「木拾い表」に書き出すと、製材時の歩増し寸法を加味した体積も出ますので、材の単価を入れれば、この設計でかかる構造材の費用が大体わかります。
実際に平面図を見ながら架構を考えたり、模型を見て伏図を描いたり、実習中心で進んでいき、最後には伏図がかけるようになっているという授業です。今年もしっかり理解してくれました。
卒業後は「いつも美しい伏図を描く設計者」になってくれることを願っています。
木造建築教員:松井匠