【授業レポート】製材プロジェクト授業(PJ)1回目
製材プロジェクト授業(以下、PJ)について、クリエーター科 林業専攻2年の梅村がレポートします。
アカデミーには、学生の自主的な活動を単位として認定してくださる「プロジェクト授業」があります。
製材に関心がある!という学生の声を受け、木造建築専攻の吉野安里先生が課外授業を立ち上げてくださいました。その名も、「製材PJ -製材を通して川上~川下を考察する」です。
今回(6月22日)の参加者は、教員は木造建築専攻から2名、林業専攻から1名。
学生は、林業専攻7名、木造建築専攻1名、木工専攻1名、エンジニア科1名。
土曜日という休日にも関わらず、熱意のある12名もの教員・学生が集まりました。
製材機械や刃について、丸太の見方、木取り(丸太からどのように製品を取るか)について学びました。
まずは、製材機械と刃についてです。
製材機械の仕組みについて。刃に問題がないか、作業前点検は欠かせません。この帯鋸には205個もの刃がついています。目立ては業者に出すことが多いですが、大型製材工場では5~6人の目立て職人さんがいるとのことでした。チェーンソーでさえ四苦八苦している私は、目立てという精細な作業を日々されている職人さんに心から尊敬の気持ちが芽生えました。
送材車(丸太を乗せて動かす機械)の残寸装置。装置の詳しい説明は省略しますが、実際に見ることで、どのような仕組みで動いているのかを学びました。普段はカバーで覆われているものを、見たい!と言えば見せてもらえる余裕があることが課外授業のいいところです。
普段見ることができない機械の内部を観察しながら、説明を聞きました。節が多かったり丸太の繊維が複雑であると、刃に負担がかかり亀裂が入ってしまうことがあります。そうすると修繕にコストがかかり、亀裂が3か所あると買い替えのほうが経済的であるとのことでした。
そして後刻実際に製材をしてみると、丸太が少し楕円であったり凹凸があるだけで座りが悪くなり、また曲がりがあると末口と元口の中心を揃える作業にも時間がかかり、作業効率が落ちてしまうことを実感しました。
山での実習では、枝打ちをしていない林分や曲がっている木を多く見かけ、バイオマスで燃やしてしまうのではなくもっと活用できたらいいのにと思っていました。しかし、節やねじれの多い丸太を製材することは、製品の経済的価値が落ちるのみならず、製材の作業効率を下げてしまうこと、そして機械を痛めてしまうということがわかりました。
しかし私は曲がった丸太からできた湾曲している板の個性に、魅力を感じます。学びながら、その気持ちとのせめぎあいでした。
次に木の見方を学びます。
素材の矢高と製品の矢高の違いについての説明を受けます。
丁寧に皮むきをしてから矢高を計測しました。皮を剥ぐとゾウムシの幼虫がたくさんおり一同驚き!梅雨入りのこの時期は虫が入りやすいということを肌で学びました。
丸太の状態で横向きに亀裂が入っているものや、ねじれが見受けられるものは木材に力が加わっており、製材したときに反ってしまう可能性が高いため敬遠されます。また、一見通直に見える丸太も計測してみると2.5cmの曲がりがありました。この曲がりがあるだけで、取れる柱の寸法が変わり、丸太の歩留まりが悪くなってしまいます。
山の授業では「通直」「曲がり」「大曲」とざっくり判断していたことが、製材部門ではmm単位の違いが大切になるというギャップを感じました。
想定外に無節面が出現した丸太。1日かけて、丸太を3本も製材させていただきました。とても贅沢な環境です。
そして実際に製材を行いました。
自分たちの販売ルートの中で一番価値の付く主製品は何か、丸太の末口径と曲がりを見て、どの製品がとれるのかを考えます。加えて、複製品についても決めていきます。刃の浅利の2mmを考慮し、残寸190mm、180mm、175mm、、と、細やかな作業を通して、できる限り丸太を無駄にしないように製材を行っていきます。
このように段取りをしてから行う製材ですが、120角の柱を取ろうと始めたところ想定外に無節面が出現し、建築材ではなく家具材として木工で使ってほしい!と板材を取ることに変更しました。
木材は工業製品と違い、1本1本の特性が異なります。そしてこれは製材をしてみないと分かりません。このように、木の特性に合わせて臨機応変に変更し、価値を付けていくことに製材の面白さを感じました。
川上でも、木の特性を見極めてチェーンソーの入れ方、伐倒の仕方を工夫し、そこが面白いと言います。これは川上、川中と通じることなのですね。
今回の丸太の無節面はとても綺麗で、いい材でした。50年程前に演習林で枝打ちをしてくださった林業短期大学校(アカデミーの前身)の先輩方に、感謝です。色々な人が関わったこの板が、沢山の人に触れる素敵な家具となると思うと、うれしく思います。
そして、PJ名でもある「川上~川下を考察する」。
授業の中で、このような場面がありました。
塩田先生(林業専攻)「過去に製材機で固定しやすい最短の長さを知ったとき、山でその長さ以上で造材をすることが製材所で働く人のスムーズな仕事に繋がるという自分の中で発見だった。」
吉野先生(木造建築専攻)「製材機の前では、来た丸太をどう工夫して製材するかしか考えたことがなかったので、山のその視点は無かったなあ。」
川上・川中・川下と、同じ木材を扱っていても、それぞれの立場で見え方や気づきは異なります。アカデミーでさえその想いを共有する機会が不足しており、少しの共有でお互いが心地よく仕事ができるのではないかと改めて感じました。
まとめとして、今回の授業を通して、自分の中で以下の3点が特に印象に残りました。
- 節やねじれなどは、製品の経済的価値を下げてしまうのみでなく、製材の作業効率を下げ、機械を痛めてしまう。このことを考慮したうえで、山にある木をどう最大限活用できるかを考えること。
- 山での木の感覚と違い、製材ではmm単位で木材に価値をつけている。しかし、山でも製材でも自然素材を相手にしているからこその面白さがあるということ。
- 林業従事者と製材従事者がコミュニケーションをとることで、働く人も心地よく川下へ木材をお届けできるのではないか、ということ。
川上~川下の人がフラットな立場で学びあえる機会を持てるのは、アカデミーならではだと思います。そして今回の授業で学んだことを、林業・木工・木造建築の学生がそれぞれの学びにつなげていけると思うととても楽しみです。
どの専攻の学生も参加できるよう土曜日に組んでくださった吉野先生、一緒に参加してくれた先生方、学生へお礼を申し上げます。ありがとうございました。
次は経済的な部分を学びたいな、と意欲が出てきました。
次回もよろしくお願いいたします!
林業専攻2年 梅村成美