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2024年05月25日(土)

描いて測ることで理解する「空間認識」(自力建設2024)

 今年度自力建設のプロポーザルコンペを月末に控え、一年生は必死にアイデアを練っているところです。
といっても、図面を描くことそのものが初めて、木造建築を設計することが初めてという人が大多数ですので、まず作図と木造建築の基本を学んでいきたいところ。
建築専攻の授業「空間認識」では、この二つの基本を同時に身につけることができる「実測野帳」実習を行います。

空間認識-実測4 

今年の自力建設は「小規模木材乾燥庫」なので、実測の舞台は同じく木材乾燥庫「活木処」。こちらは2003年度の自力建設で、住宅一棟分の構造材が入る大きさで設計されています。今回の課題より大きな建物ですが、OMソーラーを使った乾燥システムの工夫や、材の搬入出のための大スパンの設計、建具の使い勝手など、共通しそうなヒントが多く散りばめられています。

空間認識-実測1

「実測野帳」とは、対象の建物を図面化する作業で、古民家など図面がない建物の改修前には欠かせない技術です。
全4回の授業で、平面図・立面図・矩計図・小屋伏図の4種類の図面を作成しました。
主にグラフ用紙にシャープペン、赤ペンで行います。図面の概念を講義して、縮尺と方位を書いてから、柱を描くところからスタート。建物内をうろうろしてよく視たり測ったりながら図面にしていきます。

空間認識-実測2

図面にしていくためには、よーく視ないといけません。
実測野帳を採ると、ただ漫然と眺めていた時には気がつかなかったことに、多く気がつきます。
梁の継ぎ手の位置や、建具の枠の決り、レールがどこまで走っているか、梁の先はどこまで伸びているのか、柱勝ちなのか梁勝ちなのか。
設計者の創意工夫が伝わってくる、贅沢な時間です。
空間認識-実測3

近年は実務的な応用技術としてiPadに描いて写真と共にクラウド保存する方法もあるようですが、紙に描くと拡大縮小のできないので縮尺の感覚が身につきます。
初めての作図ですが、みんな夢中で測っています。

 

空間認識-採寸

伏図まで作成するので、木造の骨組みがどんな組まれ方をしているのか、かなり理解が進みます。
実測野帳作成は、観察眼も鍛えることができ、レイアウトを美しくすることも学べます。非常に多くの学びに満ちた技術向上の近道なのです。

空間認識-実測図矩計

図面の基本がわかったところで、各自がコンペ案を詰めていきます。
講評会当日がたのしみです。

 

木造建築教員:松井匠