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2025年03月21日(金)

雨どい(自力建設2024「栞」)

みなさん、「雨どい」について考えたことありますか。
屋根と外壁の先についているアレです。
正直、日ごろ大して意識することはないと思います。
今回、その雨どいの設計・施工を通して深い世界を知ったので綴りたいと思います。

今年の自力建設では、コストの関係とあくまで「乾燥庫」という用途から、雨どいを付けるのか否か、冬までもつれ込む悩ましい問題でした。
結果的には「付ける」ことになりました。

まず、雨どいを付けないと下の写真みたいになります。
先の地面が掘れて、泥の跳ね返りで建物の足元が汚れます。
土台周りのシミや腐食の原因につながります。もし雨どいを付けないなら、軒下に浸透桝を作るなどの外構の工夫が必要になります。

雨水で掘れた軒下の地面

跳ね返りで汚れた土台

そんな現状もあり、今回は建設費の原価を見直して予算の目途をたて、年末に雨どいの設計を急ピッチで始めました。

設計で考えるときの要点は、排水能力、意匠、コストのバランスでした。

排水能力は、屋根の大きさ(投影面積)と降雨強度(各地域の想定される大雨の強さ)から、必要なといの大きさと勾配を計算します。

見た目とコストは、各メーカーのラインナップから、形状や大きさ、素材、色、単価などを建物全体の意匠と使い勝手とのバランスを考えながら、実際に図面に描いてみて絞り込んでいきました。
今回は最終的に3パターンくらいに絞り込んで、美濃加茂市にある「後藤板金」さんへ打合せに伺い、仕様を確定しました。
今回は、ガルバリウム鋼板製の黒色で、半丸型の軒といと丸型の縦といの組み合わせにしました。

それでは現地施工の様子です。

まず、レーザー水準器で雨どいを取り付ける鼻隠しの水平を確認し、水上側と水下側の高低差を決めます。

レーザー水準器で水平確認

水上側の高さ見極め中

次に、軒といの取り付け金具を取り付けます。
ちなみに今回の軒といの取り付け用の金具は、吊り下げ型なので、屋根のハゼと同線上に取り付けることで、雨水が金具の上に流れ落ちないようにしています。

軒とい金具取付中

金具はハゼの位置に合わせる

続いて軒といの取り付けです。
水下側の集水部の加工は、ホルソーとハサミで作ります。
また、軒の継ぎは、継手パーツを使う方法もありますが、今回は副社長の技で継手パーツを使わない、よりすっきりとした手法でやっていただきました。
見る角度によっては、目をよく凝らさない継ぎ目がわからないほど美しい仕上がりです。

軒とい集水部の加工

軒といを継ぐ作業

まっすぐ伸びていく軒とい

美しい継ぎ目
(写真の中央で継いでます)

軒といを取り付けたら、縦といを取り付けます。
縦といは、地面からの距離に加えて、軒といとの接続も考えて、丸といの長さ寸法を決めてカットし、上下左右の位置調整を必要とします。
そこをピタッと仕上げていくところに職人さんの技を感じます。

縦といの位置調整中

パチッと最後の金具留め作業

最後に仕上げ拭きで汚れを取り除いて施工完了です。

普段、何気なく雨から私たちと建物を守ってくれている雨どいですが、今回の設計・施工を通して、ただの雨水が通る筒ではなく、根拠ある設計と職人さんの技が組み合わさったものであることがわかりました。
みなさんもいま一度、自宅の雨どいを眺めてみてはどうでしょうか。
どのように雨水が地面まで落ちているのか考えると案外楽しいかもしれませんよ。

完成後の軒とい

完成後の縦とい

木造建築専攻 増岡