東西面耐力壁編(自力建設2023 ほとりの櫓)
今年の自力建設である「ほとりの櫓」には
樹状の筋交い耐力壁が3ヶ所に設置されます。
大きく東西面と南面の2つのデザインに分かれますが
今回は東西面の耐力壁についてご紹介します。
東西面耐力壁は、大きな樹木を模すコンセプトです。
南面の枝のように広がる躯体を広葉樹に例えると、東西面の躯体は針葉樹のように、
中央の大きな幹から規則的に枝が広がっているようなデザインにしました。
次に、耐力壁として成り立つのか、想定される地震力と耐風力を考慮し構造解析を行いました。
構造解析ソフトやエクセルを使って、変形具合や部材の曲げやせん断を基準以内に納められるように、
見た目や施工性なども考慮して、デザインを少し変更したり、荷重を再調整したりと、
試行錯誤しました。
そうして完成した施工図をもとに部材の用意と墨付け、刻みの作業に移ります。
中央の柱は幅が360㎜もあるので、120㎜の材3本を接着剤で貼り合わせて用意します。
プレス機で圧着、モルダーで製材終わったら中央柱の材の用意は完了です。
120角の約3m~4mの柱が3本くっついているので、とてつもない重さと大きさになりました。
次いで、中央柱以外の躯体の用意、墨付けをしていきます。
ちなみに、枝に見立ててデザインした部材なので、私たちは「枝材」と呼んでいました。
枝材はほとんどが同じ形なので、墨付けもパターン化して効率的に作業していきました。
そうして用意できた枝材と中央柱ですが、二度目の大工合宿での刻みは、
作業時間の関係で中央柱のみにしました。枝材は、大工合宿後に学校で刻みます。
大工合宿では、幅360㎜の追掛け大栓継ぎを、オスとメス合わせて4ヶ所刻みました。
苦労しましたが、刻みの中で新たな学びや技術の向上を感じられて、とても楽しかったです。
無事に大工合宿中に刻み終わり、接合部のチェックも済みました。
中央柱の追掛け大栓継ぎは、自力建設で一番難しい作業だと思っていたので、継ぎ手が完成して一安心しました。
大工合宿が終わると、合計60部材の枝材の刻みが待っています。
ただ前記した通り、ほとんどが同じ形なので、部材を並べて丸ノコで一度に加工したり、
実寸スケールの接合部チェッカーを作ってちゃんと刻めているか確認したり、
なるべく効率的に作業できるよう努力しました。
こうして、東西面耐力壁の刻みが完了しましたが、
南面とは違い、設備や時間の関係で建て方までに耐力壁全体の仮組みができませんでした。
ミスが無いように、墨付けや施工性を考えて、東西耐力壁を綿密に準備していきましたが、
最後は建て方本番一発勝負。
実際に組みあがった姿がどんなものか、自力建設が完成した際には
是非、耐力壁にも目を向けてみてください。
森と木のクリエーター科 木造建築専攻1年 山下輝
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