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2025年03月10日(月)

岐阜県立看護大学の学生30名がアカデミーで木造建築体験(自力建設2024「栞」)

2月17日、岐阜県立看護大学の30人の生徒がアカデミーを見学に訪れました。

今回の建築見学のテーマは、「木という素材が、丸太から木造建築へと姿を変える全過程を知る」ですが、知るだけでなく、実際に体感することでより深く学ぶことができました。

最初に辻先生から自力建設プロジェクトの概要を説明し、次に今年の小規模木材乾燥庫「栞」について建築専攻の学生が紹介しました。その後、看護大学の30人の生徒は内容に応じて3つのグループに分かれ、各活動に参加しました。
morinos・自力建設ツアーグループ:辻先生
製材とモルダー操作展示:石原先生、建築専攻 増岡・石岡
現場作業体験グループ:建築専攻 三宅・銭

 

製材体験

製材体験では、石原先生にご協力いただき、演習林から採れたヒノキ丸太から梁材を挽く様子を見学していただきました。

台車に載った丸太が、製材機の刃を通ってズバッと切り落とされていく様子と漂うヒノキの香りを感じていただいた他、日常の生活では触れる機会がめったにない、挽きたての梁材の水分を多く含んだしっとりした生木の感触も確かめてもらいました。

また、一つの丸太からどのくらいの大きさの梁材ができるのか見てもらい、切り落とした端材は、板材に挽きなおしたり、チップ化してバイオマス燃料にしたりと無駄なく使われていることもお伝えしました。

 

引き続き、4面モルダーを使用した木取りも見学してもらいました。まず木取りの前に機械や反りの説明を行い、その後実際に木取りを行いました。木取り後の木材の見た目や手触り、匂いなどの変化を知ってもらうことができて良かったです。

 

 

現場作業体験

次は現場作業班です。看護大の皆さん、自身で刻んだ板が現在建築中の自力建設の壁板になると聞いてちょっと緊張気味。

事前に、ノコギリ使用経験を聞いたら半数ぐらいはノコギリの経験があるとのこと。

大丈夫かなと、採寸、墨付け、ノコギリでの切断をチャレンジしてもらう。

最初に、アカデミー建築専攻の学生がコンベックスを使って採寸し、コンベックスを使って採寸・墨付けをする方法を実演する。「誤差1mm以下になるように同じことをしてね!」と言ったら、皆さん腰が引けた感じ。ちなみにと、皆に聞いたら日曜大工経験がある子は意外と居ない。生徒たちに2班に分かれてもらい、各班1枚づつ採寸、墨付け、切断と順にしてもらう。

 

コンベックスを10cmのところを起点に必要長さ採寸する方法や、指金を使って板材に直角の切断線をけがくこと、ノコギリで直線に切断する方法を教えた通りに実践していく。

皆さん本当に素直で、よそ見することなく、みんなで助け合いながら一つ一つの作業をこなしてくれていて、将来お世話になるかもしれない看護師の卵のチーム力に感服。

切断が終わったら、2枚の板の長さの差が1mm以下になっているか、板を2枚重ねた状態で両端を手で触って体感してもらう。

結果としては、1mm以下に収まるだけでなく、ほぼ同じ長さになっていて、みんな大満足。

建築専攻としても1mm以下に出来ないと思っていたので、生徒たちの仕事の丁寧さにびっくりすると同時に、「さすが看護師さんをめざす人たちだけのことはある」と、生徒たちの見る目が変わっていった。

作業完成時に、軽くアカデミーの魅力を伝え、「卒業したらアカデミーに来てね。」と勧誘し、壁板取り付けへとバトンタッチ!

体験の最後のステップでは、皆さんが自らインパクトドライバーを使って、寸法通りに作られた内壁板を建物の内壁に固定します。生徒さんたちはほとんどがインパクトドライバーを初めて使うため、最初に簡単な使用方法と注意点を説明しました。その後、それぞれ準備された木板で、安全にネジを固定する練習を行いました。次に、必要な位置に応じて最終仕上げを行いました。皆さん一生懸命自分の作業をやり遂げ、自力建設の一員となりました。

 

半日の時間はあっという間に過ぎてしまいました。異分野間の交流を通じて、それぞれの視点や知識を共有し、新たな発見や学びが生まれました。初めての工具に触れた学徒たちも、実際に手を動かしながら経験を積むことで、自信をつけることができたようです。

 

                              木造建築専攻 増岡、石岡、三宅、銭

 

 

自力建設ツアーでは過去の自力建設23棟の内、特徴的な建築を見ていただきました。

2003年の自力建設「活木処」は、太陽熱を使った木材乾燥庫です。ここで、毎年の自力建設の材を乾燥しています。つまり、今回手伝っていただいた小規模木材乾燥庫「栞」のお兄さんにあたる建物です。

乾燥の仕組みは、屋根で太陽の熱を集めて大きな換気ファンで室内に送り込んで乾燥を促します。夜間に気温が下がったときに、外壁面で結露させて屋外に排出することで除湿を行います。

看護大の学生さんもなるほどと興味津々に見ていました。

 

続いて2019年の自力建設「Cobiki」です。大きな屋根の下に簡易製材機が設置され、学生が丸太からの製材を行える施設です。今回建設中の「栞」に入れる広葉樹の板材の大半はこの「Cobiki」で製材される予定です。

自力建設は小さい建物ながら、構造や機能など随所に工夫がされており、建築の奥深さを伝えることができました。

木造建築教員 辻充孝