人のつくったものを評価できるようになろう「デッサン教室」を開講しました
クリエイティブの最小単位として「クロッキー教室」プロジェクトを実施していますが、今回はその延長で「デッサン教室」を開講しました。
朝7時から1時間半×4日半の静物デッサンです。
クロッキーやデッサンは「視る力」を養うことができます。
「視る力」をつけると良いことがあります。
それは、
・他人のつくったものを評価できるようになる。
・自分のつくったものを評価できるようになる。
ということです。
とても大切ですね。これからクリエーターになる人には特に。
初回のモチーフは骨(鹿・猪)、2回目は骨と木(60ミリの立方体)です。
デッサンは、数時間かけて描きます。
クロッキーは一枚5分に設定していますが、短時間と長時間では、集中力や脳の使い方が変わります。
「視る力」の向上は、筋トレと近い部分もあるので、バランスよく効果的な方法で鍛えると効率が増すのです。
モチーフと自分の絵の形がずれたら直す、陰影のトーンがずれたら直す、距離がずれたら直す。
これを繰り返すうちに、モチーフを観察する力ができて、いつの間にか僅かな光の差が見えるようになったり、2ミリのずれに気がつくようになります。
認知科学的には「網膜に写っているけど認識できていない」状態から「網膜像の中から認識できる領域を拡げていっている」という感じでしょうか。
また「四角い紙の中で絵が右に寄っているな……」など、絵の印象の重心に気が付いて、バランス感覚も養われます。
そうするうちに、ちょっと立ち上がって隣の人の描いた絵を見ていると、その他者が絵に向かっている時間を追体験しているような感覚を得ることができます。自分も同じものを同じタイミングで描いているので、推測しやすいのです。
「この人はこの線を描くときに強い気持ちで描いていてすごいな」とか「慎重に描いていて集中力があるな」とか「ここは修正すべきと気付きながら放置しているな」ということが、推測できるようになるのです。
これらの能力が総合的に身につくことで、絵を評価できるようになってきます。
デッサン教室では、最終日の講評会で隣の人の絵に一言コメントしてもらっていますが、みんなとても的を得た講評をします。
できた絵は、熱意の伝わる良い絵ばかりでした。
1時間目の授業が始まる前の朝7時から、有志で実施したプロジェクトでしたが、夜明け前の5時から描いている人、夕方にまた来て夜12時を超えてもまだ描いている人もいて、只事ならぬ熱意を感じました。
そのうち「つらい」「もうどこに向かっているのかわからない」「しんどい」「ずれていた」という声が上がります。
そうですよね。絵を描くこと、何かをつくることは楽しいだけではないということがわかる瞬間です。むしろきついことの方が多いですね。
この授業は絵が上手くなることを目的としていません(むしろ上手くならなくて良い)。
それよりも、ひとりで完成させること、自分の絵をよく見ること、人の絵をよく見ること、一生懸命諦めずに修正することが目的です。
自分の絵がひどい有様なのにそれでも修正する、描き続けるというのは、大変つらいものです。どうしてそれでも描くのでしょうか。何の意味もないのに。でも隣を向くと、同じことをしている人がいます。
これからも続くと良いですね。
※初回と2回目の合間に、教員によるデモンストレーションも実施しました。