【見学報告】木質建材の製造現場を見学しました
先日、クリエータ科木造建築専攻の学生4名、エンジニア科林産業コースの学生1名、森林研究所の田中主任研究員と、
愛知県愛西市にある「片桐銘木工業㈱」を見学しました。その様子をさらっと報告します。
まず、同社の片桐専務に、製造している木質建材の概要について説明していただきました。
事務所横のショールームも見せてもらいました。
「片桐銘木工業㈱」の特徴は、なんといっても生産している木質建材の種類の多さです。
造作材(内装材)・構造材を問わず、受注生産であらゆる木質建材を生産しているとのことです。
授業でも、いろいろな木質材料の概要について教えているのですが、
1回の見学で多くの製品について見て回ることができるので、講師としても助かります。笑
まず、製品のストックヤードを見学します。同社の多様な製品がここで出荷待ちをしています。
昨今の問題として、長尺物の運送が難しくなってきているとのことです。
ここの建屋は集成材構造。もちろん自社で製造した集成材を使用しています。
同社の集成材工場を見学します。
「片桐銘木工業㈱」では、昨今では珍しくなった大断面の構造用集成材の製造設備があります。
こちらでは、主に流通サイズでない(特寸)の集成材を製造しているそうです。
本年7月に見学した豊田市博物館(過去のブログを参照してください)で使用されている集成材の製造も、一部請け負っていたそうです。
集成材製造の要となるグレーディングマシーン。校正試験も月に1回実施しているそうです。
集成材の製造工程、生産管理について丁寧に説明していただきました。
こちらでは、集成材以外にも、無垢の内装材(羽目板等)も製造していました。
続いては突板(つきいた)・造作材工場の見学です。
同社の特徴のひとつに、突板の生産を行っていることがあります。
突板も2種類の方法(スライスとロータリー)で生産が可能です。
スライサー(上)とロータリーレース(下)になります。
ロータリーレースというと、合板・LVL工場で見ることはありますが、
突板用の長尺対応のロータリーレースは全国的にもかなり珍しいと思います。
とにかく、その巨大さに驚かされます。
土場に置かれた突板用の丸太に学生も興味津々です。
歩留まりの上では、直径50㎝以上の丸太が望ましいそうです。
突板は、いわゆる「はりもの」に用いられるため、世間では安価に思われているかもしれませんが、
実はかなり贅沢な木材の使用手段です。
運良く(毎日製造しているわけではないため)、突板の製造をチラッと見ることができました。
突板の厚さは樹種や用途にもよりますが、薄いもので0.2~0.3 mm、厚いものでも0.6 mm程度とのこと(※合板用の単板は1~3 mm)。
製品が薄くてデリケートなため、夏場でも扇風機が設置だきないとか…職人さんに頭が下がります。
製造スキルを持った職人さんも限られるそうです。
突板の製造に関してはテキストでも触れらることも少ないため、私もとても勉強になりました。
「突板の製造にこんなに手間がかかっているなんて知らなかった」とコメントする学生も。
続いて、造作材(突板製品)製造工場を見学します。
片桐専務も「かなり工業製品っぽい製造ライン」と仰っていましたが、
集成材工場、突板製造工場に比べるとかなり雰囲気が異なります。
突板は天然木由来のため、プリント製品と異なり、
(繊維の乱れ等が反映されるので)ある意味で「乱れた」表面になることが多いのだとか。
塗装ラインも見せていただきました。最後は手作業で仕上げるそうです。
「機械化できる工程と、人間じゃないとできない工程がある」とのことですが、これは木質建材の製造において肝要なポイントだと思います。
木造建築専攻の学生の多くは、卒業後に設計業務に携わります。
無垢製材については、当校の教育プログラムのなかで充分に知識を深めることができるのですが、その他の木質建材についても、『どのような過程で生産されるのか』を把握することは、設計業務を行う上で極めて重要です。
この見学が、彼らの将来の役に立てればと思います。
最後に、長時間に渡ってご案内をして頂きました、
片桐専務をはじめとした同社のスタッフの皆様に、改めて深謝いたします。
講師 石原 亘