木工事例調査 関西③(SHARE WOODS山崎正夫さん前篇)
クリエーター科木工専攻の恒例授業「木工事例調査」に行ってきました。昨年はコロナの影響で県外への訪問は実施できなかったのですが、今回は感染対策を万全にして兵庫、大阪、京都の博物館、製材所、木工工房などを1泊2日で回りました。
学生によるレポート第三弾はSHARE WOODS 代表 木材コーディネーターの山崎正夫さん(前篇)です。
今回の事例調査ではSHARE WOODSの代表である山崎正夫さんのご案内で5箇所もの場所でお話を伺いましたが、山崎さんの活動を手短に紹介するのはとても難しく悩みました。強引に一言で表現するならば山崎さんは「木材の価値を創造する人」です。木材コーディネーターとして森林所有者、素材生産者(森林組合など)、製材業、モノ作り作家、消費者といった人と人を結びつけ、木材に新たな価値を生み出す役割で、他にこういった活動をされている方はあまりいらっしゃらないかもしれません。
山崎さんは木材生産を目的としている林業とは別に、神戸市を中心に都市にある街路樹や隣接する森の樹、里山の森の樹など、地域資源としての木材を地域で循環させるための仕組みづくりに取り組まれています。今回、山崎さんに具体的な活動事例や活動拠点をご紹介いただくことで、どのように「木材価値の創造」に取り組まれているのかをお教えいただきました。
■「六甲山の森林資源活用」
山崎さんのご案内で、神戸市役所 建設局 防災課 新銀仁善さん、道木柳太さんに六甲山の森林整備の取組みについてご説明いただきました。
<六甲山の歴史>
古くから六甲山は都に近いことから、薪炭材、木材、石材採取などの過剰利用が進み、江戸時代には禿山状態に。防災上の観点から明治期以降は植林などの災害防止のための事業が行われてきました。
<山の状況>
六甲山を含む神戸市森林面積の6%の針葉樹の人工林は、手入れされずに放置されているケースが多々あります。一方、神戸市森林面積の93%の広葉樹林は昭和30年代までは薪炭利用されていた落葉広葉樹も大木、高齢化が進んでいます。同じ時期に植林されたため、樹種や樹齢の多様性が乏しいまま世代交代できていないところもあり、伐採をするなどの手入れにより森林の更新を進める必要もあります。
<森林整備戦略>
新たな都市山、里山として再生するために2012年に神戸市は「六甲山森林整備戦略」を策定しました。目的に応じた森林の姿にすべく整備方針が定められています。計画は短期計画が2025年、長期計画は2050年、さらには100年後を見据えて森林の将来像の実現を目指すとのことです。詳しくは、神戸市役所のホームページ参照のこと。
さらに、2020年には「六甲山森林整備戦略」を元に「森林環境譲与税を活用した森林整備実施計画」が策定され、森と木に関わる様々な人をつなぐ仕組みづくりが行われています。
<六甲山の森林資源の活用>
森林整備の過程で伐採される樹木の活用も整備戦略の重要な要素です。針葉樹は建築用材への利用、広葉樹材は神戸市役所市民ロビーのベンチ、店舗など什器に用いられるなど、活用の幅を広げています。六甲山そのもののブランド化への取組の一環としても、家具や内装、生活雑貨などの木製品としての利用は期待されています。山崎さんはこれらのモノ作りをコーディネートされています。
なお、森林資源、樹木を材として利用するためには製材と乾燥が重要であり、製材乾燥は神戸に唯一残る製材所 株式会社 三栄が担当されています。長年、家具・建具用材を中心に丸太の製材から行っており、針葉樹・広葉樹、国産材・外材を問わず製材してきた経験が生かされています。
後編に続く
文責
森と木のクリエーター科 木工専攻
渡邉聡夫(2年)、高橋敏(1年)