ウィンザーチェアを作る(副学長の椅子、できました!)
まずはこの椅子、ご覧ください。学生の手によるオリジナルのウィンザーチェアです。
この授業(「木工製図」と「椅子の製作」)は、学内で要望を聞き、設置場所や座る人などの条件を踏まえて学生がウィンザーチェアをデザインし、製作するものです。
今年は副学長室の椅子がほしいというリクエストがあり、2年生の岡田和美さんが製作しました。
タイプ的には「スモーカーズ・ボウ」と呼ばれる、イギリスのパブなどに見られる背の低いタイプの椅子です。
この授業で学ぶことは、人間工学の基礎、ウィンザーチェアの基本的な構造や寸法、簡単な原寸図の描き方、手工具や電動工具を使った座面の成形、木工旋盤による丸棒加工と、多岐に渡ります。人間工学の基礎は、毎年お世話になっている岐阜県生活技術研究所(高山市)の藤巻吾朗研究員に解説いただきます。
ウィンザーチェアの基本的な構造や寸法は、こちらも毎年お世話になっている飛騨産業株式会社の中川輝彦デザイン室長に解説いただき、ショールームで製品を実測させていただきます。
学校に戻ってから、長沼隆副学長の体を実際に測定。「背もたれは低く腰をサポートしてほしい、肘掛けは机に当たらないよう短めに」などのリクエストを聞き、デザインを考え、原寸図を描きます。
このスモーカーズ・ボウタイプの椅子は、教員の私(久津輪)も作ったことがなく、試行錯誤しながらの製作でした。途中、コロナウィルス感染対策のため3ヶ月近く学校が休校になり、製作がストップしてしまいましたが、6月に学校が再開してからやっと完成にこぎつけました。
そして6月18日、副学長に納品。サイズもぴったり、掛け心地もよく、喜んでいただきました。もう少しシンプルな椅子の方が卒業後に役立つかな、とも思いましたが、やはりこれだけの椅子を作る経験をすると、自信がつくと同時に多くの学びが得られます。
製作を終えて
岡田和美(クリエーター科・木工専攻2年)
昨年の12月初めに高山の生活技術研究所と飛騨産業での見学、材料の購入に始まり、途中コロナの休校を挟んでようやく納品。
1脚の椅子と対峙する間に、あれこれ感じていたことを改めて思い出す。
まず技術、木工専攻だけど、てんで下手くそ。
いきなり座面の板接ぎのジョイント位置を間違え、座ぐりで露出!やり直して2枚接ぎが3枚接ぎになるポカ。
何度やってもスピンドルは刃傷だらけ、貫はスカスカになる技量の無さ。延々練習を続けてようやく及第点。
求められるモノ・コトと自分のウデとキモチがちぐはぐ。当たり前だけど複雑な思い。
それから自然物である木への驚き。
樹種による違いは知識としてはあっても、実際に使い分けたのは初めて。
座面や背もたれにオニグルミのふわりとした柔らかさを、脚やスピンドルにヤマズミ(オオウラジロノキ)の密な硬さを感じ、
使い分けられた木の質感や表情に構造的な美があることにも驚く。
また、木目を考えた木取り、組みあがっていく現物に合わせた削りやほぞ穴角度の設定など、
木と人間の長い間の蓄積、柔軟さ、合理性に驚いた。
思い通りにならない癖のある人と付き合っているようにも感じた半年間でしたが、
納品では長沼副学長に喜んで頂けて、ほっとしました。
受講生が私一人だったので、私に合わせて丁寧な指導を頂けたのも贅沢なことでした。
感謝します。ありがとうございました。