我谷盆をつくる〜グリーンウッドワーク・プレミアム講座
<2019年8月29日、学研プラスより発売の『グリーンウッドワーク 生木で暮らしの道具を作る』(著者:森林文化アカデミー准教授・久津輪 雅)に我谷盆の作り方が詳しく紹介されています。ぜひご覧ください>
森林文化アカデミーでは9月17日と18日の2日間、グリーンウッドワーク・プレミアム講座「我谷盆をつくる」を実施しました。我谷盆とは、クリの丸太を薄く割り、丸ノミや平ノミなどのごくわずかな道具で彫った素朴なお盆で、現在の石川県加賀市の山中で昔から作られてきたものです。生木を人力の道具で削ることから、私たちはこれを日本オリジナルのグリーンウッドワークと捉え、みんなで学ぶ機会を設けました。
講師にお招きしたのは、京都の木工家・森口信一さん。森口さんは我谷盆に魅せられ、いちど絶えてしまった我谷盆づくりの技術を独学で学び、継承している第一人者です。
参加者の方には、クリの丸太を割るところから体験してもらいました。クリはあらゆる木の中でも、もっともよく割れる木の1つです。また水にも強いことから、昔から民家の屋根葺きの材料として用いられてきました。我谷盆も、かつては屋根板づくりの職人たちの副業として作られていたのだといいます。
制作では、大きな丸ノミと平ノミを用いて荒彫りします。
その後、4分(12mm)〜6分(18mm)の丸ノミを用いて、全体に溝を掘るように彫っていきます。
側面はグリーンウッドワークらしく、セン(ドローナイフ)で削ってもらいました。
できあがった我谷盆。木灰を溶いた水に漬けておくと、アルカリ反応で茶色くなります。木目が美しく際立ちます。参加者全員が、10時から5時までの講座の間に作り上げることができました。
いったんは途絶えた我谷盆に美を見出したのは、後に木工芸分野の人間国宝となった黒田辰秋でした。「我谷盆賛」という文章を残して、その素朴な良さを讃えています。
森口信一さんは、その黒田辰秋の息子、乾吉に木工を学びました。そして今回この講座に、黒田辰秋の孫の悟一さんが参加してくれました。黒田辰秋が見出した我谷盆が、世代を超えて受け継がれていきます。
グリーンウッドワークの講座としても、少ない道具で質の高い暮らしの道具を作ることができ、優れたプログラムだと思いました。実は今回、申込みの受付からわずか30秒で2日間とも定員が埋まってしまい、人気ぶりに驚いたのですが、これからも我谷盆の講座を開催して多くの方に楽しんでいただこうと思います。
(木工・久津輪 雅)