ドイツ・サマーセミナー2019報告 最終回
9/20(サマーセミナー6日目)
森と木のエンジニア科2年の古田康人がセミナー最終日の報告をいたします。
コマツフォレスト ドイツ支部
日本で林業機械の開発、販売を行っているコマツフォレストさんのドイツ支部の見学と実際の作業現場の見学をさせていただくことになりました。コマツフォレストドイツ支部では、営業部長のトーマスさんに説明をしていただきました。
ここでは現在40人が働いていますが、事務所で働くことは少なく、実際に現場に行って修理などの作業をすることが多いそうです。ドイツ語圏のほか、ヨーロッパ全域にむけてフォワーダ、ハーベスタといった林業機械の販売を行っています。売り上げは順調で、昨年度の売り上げは1億ユーロ(日本円で約120億円)を記録しており、日本にある本社も満足しているとのこと。
ドイツでは60センチ以上の大径材を扱うことも多くあり、その場合他社の機械では力不足になってしまいますが、コマツはドイツ用に大径材、長い材が扱えるようにしてあり、さらに地面への負荷、急斜面での作業にも対応できるように改良を重ねてあります。
実物を見せていただいたフォワーダは幅が3メートルもあり、とても巨大でした。しかし、ドイツの公道は44t以下の車両でないと走行できないため調整がしてあるそうです。
ハーベスタは操作が難しくストレスがかかる為、オペレーターの給料はかなり高いそうです。ハーベスタの操作に適した人はフォワーダの20%しかいないとの事でした。
コマツはオペレーターの養成にも力を入れており、シミュレーターの販売も行っています。現場での作業は10~15時間シミュレーターで練習をしてから行うそうです
午後からは実際に機械を使用して作業している様子を見学させていただきました。ここで作業している会社は15年間コマツの機械を使用しており、現在も6台所有しているそうです。ハーベスタは1台3600万円もしますが、ドイツでは林業機械を買うのに国や州などからの補助金は無いため、自力で買うしかないそうです。
写真だと分かりづらいですが、よく見ると作業しているハーベスタのタイヤ付近を払った枝や葉が散乱しているのがわかると思います。これはハーベスタの進行方向にわだちができないような工夫の為にわざと枝葉を置いているそうです。わだちができると水が溜まり、土砂災害につながる可能性があるそうです。コマツフォレストの機械は地面に負担がかかりにくい設計になっていると書きましたが、完全に防ぎきれるわけではないので、ここでもう一工夫加えているということです。
ドイツでは現在、乾燥による被害や、それに伴うキクイムシの大発生による食害が各地発生しています。この現場も例外ではありませんでした。
今回伐採した木の内部にキクイムシと産卵痕が確認できました。キクイムシは乾燥した環境を好むため、乾燥が続くこの国はまさに楽園のような存在ということになります。こんなにも小さい昆虫がドイツのフォレスターたちを苦しめている現状が信じられませんでした。しかし気候が関連した問題は人間の力ではどうすることもできないので、今は何とかして対策を編み出すことが緊急の課題とのことです。
サマーセミナーとしての工程は以上で終了です。最終日には日本から参加した大学の交流パーティーが行われました。
少し寂しい気持ちもありますが、貴重な経験をたくさん積むことができたので、充足感が溢れるいい研修となりました。研修の機会をいただきありがとうございました。
日本を離れ一週間、ラーメンが恋しくなってきた古田でした。
報告:エンジニア科2年 古田 康人
※現地に行った学生の報告会を11月12日(火)に行います
時間:18:00~19:30
場所:森林文化アカデミー メディアラボ1F 多目的室にて