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2016年11月12日(土)

ドイツ サマーセミナー報告⑧(9/15)

9/15 (Day5)

高性能林業機械の見学 in Baden-baden

教員の津田です。すっかり間が空いてしまいましたが、サマーセミナー5日目の報告です。この日はBW州のシュバルツバルト北方の森林に高性能林業機械の現地見学に伺いました。いつも通りバスに乗って見学地に向かいます。

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途中で国立公園化された標高約1000 mの森林を通っていきます。ここは1999年の嵐によって被害を受け、今ではドイツトウヒPicea abies、ヨーロッパモミAbies alba、ヨーロッパブナFagus sylvaticaの比較的若い林が成立して来ています。ドイツ林業の目標として手を付けない森林を全体の5%に持っていくこととしているが、ここでは嵐の後の回復過程も含めて、国立公園化し保護区を設定しているそうです。また周辺の林にキクイムシ(bark beetle)の被害が広がらないように伐採可能なバッファーゾーンの設定が許されているようで、環境保全と林業の両立を考慮している様が感じられました。ここBW州は5年前から緑の党が政権を握っていて国立公園化をすすめてきたそうです。農村部では反対の声も多かったようですが、議論を重ねて国立公園化がなされ、エコツーリズム等で歓迎もされているようです。

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現地に到着してハーベスタ技師であるモーロック氏の説明を受けます。あたりにはシダ類やブルーベリーが下層に繁茂しています。これらの植物は堅い酸性の土壌の指標となっているそうで、こういうところは大型の林業機械を入れやすいとのこと。林業の現場では植生に関する知識も大切ですね。

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ドイツトウヒをメインとした森林でハーベスタを見せてもらいます。現場の斜度に応じてホイール(タイヤ)型とキャタピラ型と使い分けるそうです。ここは斜度がきつくキャタピラ型を使っているとのこと。

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このハーベスタのヘッドは直径70 cmまでの木に対応しているそうで、径50 cmくらいが適当なサイズであるとのことでした。この林はそれより小径で、機械があっていないとのことでしたが、遊ばせておくのも勿体ないということと、どの程度で生産性を上げることができるのか、試験的な意味合いもあって使っているとのことでした。

 

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少し移動してフォワーダの見学に行きます。こちらは先ほどの場所より斜度が緩いところで、ホイール(タイヤ)型のフォワーダでした(フォワーダは多くはその仕様で例外的にキャタピラ型があるようです)。土壌への影響はホイールの方が少ないそうです。ここは斜度15°程度で充分上がれる角度だそうですが、補助的にウインチでつないでいました。

 

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次はバスで少し移動して、タワーヤーダの見学に行きます。ここはさらに急傾斜の場所でした(タワーヤーダに「急傾斜専門」とドイツ語で書かれている!)。車両系の機械が入れないところでも作業が可能で、平らで土壌が悪い場所でも有利だそうです。ハーベスタ、ラジコンキャリーのコントローラー、チェンソーの3名で作業しているとのこと。このうちハーベスタを担う人は樹種、直径、ねじれなどを判断できねばならないため、ある程度の経験が必要とのことでした。

今回は当初予定していた場所の機械のトラブルで急遽別の場所の見学となったそうです。おそらくそちらの方が理想的な作業システムだったと思われますが、現場では常にそういうわけでもなく、そのときにできうる対応をしている様を垣間みることができました。

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また現場で必要とされるのは技術的な部分だけでなく、その場所の植生についても知識を持っていることが、その場その場の判断に重要であることがわかりました。実際ロッテンブルグ大学では、授業において100種類の樹種の同定ができるように指導しているそうです。また土壌、地質の指標となる草本も教えているそうで、これもアカデミーでの教育を考える上で参考となるものでした。