ドイツ サマーセミナー報告③(9/12)
9/12 (Day2)
ロッテンブルク大学(講義+学内ツアー)→Naturpark Schönbuch (Fried Wald→Hunting Area) 視察後半
Hunting Area in Schönbuch~生物多様性と天然更新の森
(引き続き鈴木が報告します)続いて訪れたのは、Naturpark Schönbuchの中で狩猟エリアとなっている針広混交林です。
自然保護区でありながら木材利用もしている点、都市から近い割に生物多様性が高い点などが特徴と言える森林を、フォレスターに案内して頂きました。
天然更新で森の育成を行うドイツにおいても、鹿やイノシシによる食害問題は存在します。
ドイツではフォレスター=ハンターでも有るため、森林の天然更新を促す計画の中でWILD LIFE MANAGEMENT(個体数管理)を主目的とした狩猟は、フォレスターの大事な役割となっているのです。
しかし狩猟をどんどん続ければ、生物多様性が失われる危険性もあります。ドイツ南部でRed Deer(アカシカ)が少ないのも、過去に大規模な捕獲が有った為だとも言われています。
そこでフォレスターは、森を訪れた人に森林の更新と生物多様性の重要性を両面から訴える方法を考え、色々な仕掛けを施します。例えば・・・。
これは、生息する動物の飛距離の違いが一目でわかる幅跳び場です。一番飛距離のあるRedDeer(アカシカ)は遙か遠く何と9メートル!訪問者である人間はこの森の生物多様性について、頭だけでなく身体も使って体感します。
そして40キロに渡ってフェンスで囲われたエリアの中には、300頭近くのアカシカが生息している事が知らされます。
次は頭を使う番。動物の生息を制限している?狩猟の為に?
色々な?が浮かぶ中で、段々とこちらの狩猟における課題と対策方法が見えてきます。
まずハンターが少ない日本に対し、ドイツではハンターの数は多いが、その数に比べて個体数管理が追いついていないという課題があるそうです。
ハンティングを趣味としたある一定の人口が存在しているにも関わらず、それらの人々の個体数管理への理解が薄い事を問題視している、そうフォレスターは続けます。
個体数管理が追いつかないとどうなるか・・・。比較された2つのエリアが訴えかけます。
上の画像は、囲いで覆われた1ヘクタール当り約15頭の動物が生息するエリア。そして下の画像は囲いの外で7~8頭/haの動物が生息するエリア。違いは一目瞭然。囲いの外では天然更新が発達していますが、上の画像では食べ尽くされてしまっています。
フェンスで囲う事は、車との事故を減らす為の現実的な対策でもあります。それと同時に、飼育するエリアと個体数調整を行うエリアを比較する事で、森林の更新にはある程度の捕獲も必要だという点や、ハンティングをもっと身近なものとして訪問者に知ってもらいたいとフォレスターは願っているのです。
森の管理と共に、動物の管理も行う、ドイツでのフォレスターに課せられた役割の多さに驚かされます。
狩猟に対するイメージはドイツでも賛否両論あるそうです。その中で、フォレスターは森林の成長と生物多様性のバランスの基準を明確に持ち、多種多様なステークホルダーに納得してもらう方法を探っているように見えました。
日本においても、生物多様性が軽視されてきたわけではありません。ただ今後は、一部の関係者による極端な対策ではなく、一般市民の理解を深める活動(レクリエーションの場)がもっと必要なのでは、と思うようになりました。
(文責:クリエーター科1年 鈴木 守門)