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2021年02月22日(月)

モノ作りは木を切るところから?「簡易製材と木材乾燥」その1

木でモノ作りをするとき、「さあ、山に材料を伐りに行こう」ということはあまりありません。

実は木工を生業にする立場の自分であっても、実際に山で樹を切って板を作るなんてやったことはありませんでした。これは自分が特別そうだったというわけでは無く、大多数の作り手はそんな感じだと思います。今年から始めた「簡易製材と木材乾燥」という授業は「樹を木材にする技術」を学ぶ実習です。その内容はどちらかというと林業的な内容になりますが、なぜこのような授業を木工専攻ではじめたのか、まずはお話したいと思います。

丸太の積み込み

丸太をトラックで運びたい、さあどうやって積み込みますか?(実はこの前段階の山から林道まで丸太を運び出すのも大きな課題)

近年、木工家への依頼の中に、何らかの理由で切らなければならなくなった地域の木材で何か作って欲しい。山に切り捨てられたタンコロ(伐採した木の根本の方の短尺材)を有効活用して何か作れないか?そんな注文が増えています。しかし、立木やタンコロを「材」として使えるようにするのは容易ではありません。木を安全に伐倒して枝を落とし、その丸太を車に乗せて運搬して、製材所で板に挽かなければいけません。その板をさらに乾燥させてやっとモノ作りに使うことができるようになります。これらの技術は、これまでのところ木工家の仕事ではありませんでした。結果として「地域の木や身近な樹でモノ作りをしてほしい」というオーダーが実現できるのはとても稀なことなのです。

もし木工家が、ミニマムな機材で扱える林業技術を習得していれば?

Ifのお話ですが、そしたらもっと活用できる木材が増えるのではないでしょうか?
前置きが長くなりましたが、そんな思いで今年度から始めたのがこの「簡易製材と木材乾燥」の授業です。今回、アカデミーの木工専攻で林業の先生や森林研究所の協力を得て行った実習をご紹介します。

チルホールの使い方

今回はチルホールを使った伐倒方法を教えてもらいました。チルホールは2万円~Amazonやモノタロウでも買えます

4日間で行ったこの実習、1日目の授業は立木の伐倒からスタートしました。指導をして頂くのは林業専攻やエンジニア科で伐木技術を教えている杉本先生です。実際に演習林に行って、胸高直径が30㎝弱のツブラジイを切りました。

鋸での伐倒

受け口、追い口の作り方、広葉樹伐採で注意が必要なツルの特性などのレクチャーを受けたら手鋸で切り始めます。

この実習ではチェーンソーも使いますが、ほぼマンパワーの手道具で伐木、造材、運搬を行います。杉本先生の解説を聞いたり、実際に自身の手を使って作業をする中で「自分たちでできること」「専門家に任せるところ」のラインがわかってきます。今回の伐木も最後の切り倒すところは杉本先生が操作するチェーンソーで行いました。

枝払い

チェーンソーや手鋸を使って枝を払います。手鋸での作業は大変です。

倒した木は枝を払い、木工で使う2mの長さに玉切りました。ここでは以前にチェーンソー講習で学んだことが活きてきます。

トビを使って丸太を運びます。

木工の学校でトビの使い方を学べるところは希少では無いでしょうか?

そしてトビという道具を使い、丸太をトラックを停めている林道まで引き出します。このトビという道具がすごいんです。自分も初めてのトビ体験でしたが、1人では持ち上げることもできない丸太が、この道具1つでグイグイ移動させることができます。翌日は筋肉痛確定という作業ですが、とても楽しい道具でした。

ロープワークで木を引く

ロープワークで木を引く方法も教えてもらいました。

この日はロープも大活躍でした。丸太をトラックに積む時も、ロープとスライダーを使い驚くほど軽々と持ち上げることができました。今まで丸太や板を運ぶときは人海戦術で「えいや!」と力ずくでやっていた作業が「安全」と「効率」の両面で劇的に変わりました。この技術は今後も色々な場面で役に立ちそうです。

バッテリー式チェーンソーの解説

用途にあっていればバッテリーチェーンソーは木工家に最適かも・・

1日目の実習は、山で切ったツブラジイ(コジイ)を簡易製材小屋Cobikiに運んだところで終了。その後、杉本先生にバッテリー式チェーンソーの実演もして頂きました。木工での用途やこの日の実習で使った範囲の作業であれば、重量とメンテナンスの両面でバッテリーチェーンソーの使い勝手は良さそうです。木工専攻でもトビとセットで1台導入を検討しても良さそうです。

この授業には、まだ続きがあり「製材」と「木材乾燥」にもアプローチします。
山で切った木は、水分を大量に含んでいるため、そのまま加工すると水が抜けて木はどんどん反ってしまいます。まさに「木」が「反る」と書いて板といった状態です。では、どのように板を乾かせばよいのか?その理屈と方法を学んでいきます。その様子はまた次回のレポートで。

木工専攻 講師
前野 健