森林の状況を把握する術を学ぶ〜森林調査法1 里山広葉樹林の調査編〜
少し間が空いてしまいましたが、先週クリエーター科の林業専攻科目「森林調査法1」において広葉樹林での調査を行いましたので、報告します。
まずは人工林での調査と同様、講義の後、調査に出かけました。今回は実習ですので、調査を通して調査方法を身につけてもらうことがメインとなりますが、とりあえずアカデミー周辺の里山の広葉樹林の構成樹種、階層構造などを調べることを調査の目的として設定しました。
前回同様、森林に入り調査区を設定します。今回は簡易なやり方で、クリノメーターとピッキョリという機械で斜度と距離を測りながら、長方形の調査区を設定しました。調査区を設定後、枠内の全ての樹種、胸高直径、階層(高木、亜高木、低木などの区分)を記録していきました。さらに林床の実生の調査も行いました。この日は高温注意報が出た非常に暑い日で、ここまででお昼になったため、切り上げて午後はデータ入力と解析を行いました。
2日目。1日目に取った調査区の森林を視覚的に捉えるために、植生断面図を描きました。まずは斜度を測り、その角度を方眼紙上で分度器で測って線を描き、地面の線とします。そしてその斜面上に生えている樹木を描いていくのです。調査枠として地面に引いたメジャーを使って起点からの樹木の位置を測り、樹種、直径、高さを調べ、それを元に樹木を描きます。これまで枝や葉を取り樹木の同定を学んできましたが、どのように木が生えているか、どのような樹形であるのか、じっくりと見たことがなかった学生も多く、最初はなかなか時間がかかりました。けれども一度描くと、それぞれの樹種の特徴もうまく把握することができたようでした。
また同時進行で樹冠投影図も作成しました。上を見上げてそれぞれの樹木の樹冠がどのように広がっているのかを測り、それを方眼紙上に落としていきます。植生断面図、樹冠投影図共に、描く人と測定する人のチームワークが重要です。これらの作業も午前中でなんとかできたため、この日も昼で外作業は切り上げ、午後からは図の清書と前日のデータ解析を行いました。
断面図で描かれている高木はコナラとアベマキの2本。これらの樹種はこの周辺の里山の代表的な構成樹種です。斜面の上の方に枯れて幹だけのコナラが描かれていますが、そのなくなった樹冠を埋めるように、斜面下に生えているコナラが樹冠を広げている様がいずれの図でもわかります。またアベマキも大きいのですが、先ほどのコナラに押されて斜面下方向にしか枝を伸ばせていない様子がわかります。
また植生断面図からは階層構造も見て取ることができます。高木層は先ほどのコナラとアベマキのみ。亜高木層にアラカシとソヨゴなどの常緑樹があり、さらに低木層にはやはり常緑樹のサカキ、ヒサカキ、アセビなどが多いことがわかります。このことは1日目の階層別の数値データと合わせてみると、どのような林であるのか正確に読み取ることができます。さらに林床の実生、稚樹などをみると、この林が将来どのように遷移していくのかもある程度予測することができます。
また樹冠投影図からは樹冠の面積を計算することができます。樹冠の大きさと木の直径成長は密接な関係があるとされています。1日目に直径データを取っていますので、その数値とこの樹冠面積を比べてみるとどうなるでしょうか。その結果をお知らせしたいところですが、学生の実習レポート課題としているので、今回はここまで。
今回の実習は非常に暑い中での調査となりました。しかし、この実習を通して、里山の林の構造が理解できたことと思います。また一度このような調査方法を体験しておけば、里山の林を活用する場面が出てきた際に、どのような方法でどのような項目について調査を行えばいいのかを考えることができます。今後は様々な機会において、今回学んだ方法や体験を通して理解したことを役立ててもらえればと思っています。(教員 津田格)