林業事例調査2021(3)(2021/7/26)
林業事例調査二日目の午後は、山仕事創造舎さんと同じく大町市で林業をされている荒山林業さんへ。荒山林業さんは、約270haという広大な山林を所有されている林家さんです。荒山林業さんの特徴は、なんといっても自然の摂理に合わせ、自然に近い形で林業の施業を行うということ。このコンセプトに強く惹かれ、今回見学を申し込ませていただきました。
では、早速緑の美しい山林の写真と合わせて、見学の様子をご紹介します。
約5年前に荒山林業を引き継いだ8代目の荒山雄大さんと、(株)山川草本の代表取締役香山由人さんにご案内いただきました。香山さんは荒山林業さんにお勤めの後、午前中の見学先、山仕事創造舎さんを創立された方。この春に山仕事創造舎を退かれ、フリーな立場で今も荒山林業さんと一緒にお仕事をされています。
荒山林業さんが本格的に林業の経営を始めたのは100年前のカラマツの植林に遡ります。その後、先代の荒山雅行さんが経営を引き継いだ約50年前から、カラマツを管理しながら広葉樹を生かした森づくりを行ってきました。
荒山林業さんの所有山林のうち人工林は約3割で、残りは天然林とのことです。今回見せていただいた山林は、カラマツと、主にコナラ、ブナ、シラカンバ、カエデ類、ミズメなどの広葉樹が針広混交林を形成しており、多様な植生が見られました。100年生のカラマツは、見上げるのに首が痛くなってしまう程に高く、立派なものばかりです。
美しい山林は、きのこ、草本類、昆虫類、野生動物たちの多様性の豊かさも育んでいます。
冒頭でも触れましたが、荒山林業さんの特徴は、自然に大きなインパクトを与えず、自然に近い形で林業を営んでおられるということです。
明るい林を形成するカラマツの林に自然に生えた広葉樹を生かしているため、植栽(樹木の苗を植えること)は行いません。また、様々な種類の木を1本1本観察し、選んで伐る「単木的管理」という方法を取っています。ある木と、その周りの他の木との関係性や、日当り、土壌や地形の状態などを考慮し、伐る時期を見て伐採をします。「○年生の木を伐る」というような伐期はなく、「こういう木が欲しい」というお客さんからの注文を聞いてから伐り出した原木を販売しています。お客さんが山まで木を見にくることもあるそうです。
自然の力に敬意を払い、必要以上に手を加えることはありません。「森を見ると、等間隔に生えている木はないです。」と話す香山さん。自然をよく観察することで見出した方法で行う地道な施業が、この美しい林を作っています。
印象的だったのは、見学の中で、「山を観察する」「木を観察する」と何度もお話ししてくださったことです。森は色々なことを教えてくれる先生。自然からの教えに敏感に気がつく、その目を鍛えていきたいです。また、それぞれの木を自然からの恵みと捉え、感謝しながら施業をするという気持ちを持って林業に関わっていきたいと思いました。
まだまだお話を聞いていたかったのですが、3時間の見学時間はあっという間。また、機会がありましたら、お邪魔させていただきたいと思います。
最後になりましたが、お忙しい中見学を受け入れてくださった、荒山さん、香山さんにお礼を申し上げます。
ありがとうございました。
(クリエーター科林業専攻1年 海野紗千子)
【林業事例調査(4)に続く】