林業事例調査2022(3)(2022/12/18)
林業事例調査最終日。この日は早朝から三重県熊野市七里美浜の獅子岩周辺を観察しました。
内陸の岐阜県内では見られない海岸性植生が確認できました。また、明け方の海岸線はとても美しかったです。
ツワブキやキノクニシオギク、アゼトウナ、ハマヒルガオ、ハマアザミなどの海岸線に生えるたくましくもかわいい植物たちを見ることができました。
最終日、朝食後に向かった見学先は、三重県熊野市の野地木材工業㈱さん。
こちらでは三重大学と熊野林星会が共同で開発した教育プログラムである「セーザイゲーム」を体験しました。この「セーザイゲーム」は林業・林産業における市場の機能や製材業経営を疑似体験できるゲームであり、市場の「セリ」の概念と原木を仕入れる際の「目利き」、加工して販売する「木取り」といった木材産業の概念を遊びながら理解できます。お子さんにも大人気ということで、実際に遊んでみると内容はとても充実していて、先生方や生徒たちもとても楽しんで学ぶことができました。
工場では、野地木材工業さんで決められた厳しい規格(NOZIS規格)などの製材に対する真摯な考えを学んだ後、工場の案内をしていただきました。
昼食後は、次の見学先へ移動する間に三重県北牟婁郡紀北町の県指定文化財である島勝神社樹叢で植物観察をしました。ここは暖地性の常緑広葉樹が生い茂る林で、九州や四国、紀伊半島の南端、台湾に分布する暖地性落葉樹ビロードムラサキの分布北限地にもなっています。
ビロードムラサキやナギ、イヌガシ、コバンモチ、バクチノキ、ホソバタブ、ミサオノキなどの珍しい樹種を観察することが出来ました。
3日目の最後の見学先は、三重県多気郡大台町の武田製材有限会社さんです。
様々な広葉樹の材を扱っている製材所です。扱う材の性質をよく理解していらっしゃって、例えば、ヤマモモが生木と乾燥した材で全く性質が異なり、生木では柔らかく乾燥した材ではとても硬くなること、生木時に挽いた材は乾燥したら暴れるが生木を乾燥させた材は暴れが少ない、といった材の扱いの難しさと面白さを教えていただきました。
そして、こちらで初日の滋賀県の甲賀市甲南ふれあいの館で見た前挽鋸を使って挽いた材を見せていただきました。最後の見学先でこのような伏線回収があるとは思っていなかったので、驚きとともにとてもうれしく思いました。
また、こちらの材を扱う木工作家さんとも連絡を密にされているところに、武田製材さんの材に対する愛を感じました。
最後に、今回の事例調査にご協力いただいた皆さまのおかげで、新たな知識を学び、多くの素晴らしい体験をすることができました。森林文化アカデミーの学生として得た知識、体験を活かしていきたいと思います。ありがとうございました。
(クリエーター科林業専攻1年 小川陽平)