楽しくなければ持続可能ではない!「パーマカルチャーの現場から学ぶ」
「パーマカルチャーの現場から学ぶ」2日目の報告は石川さんからです
今回の実習は天気にも恵まれ、心地よい日差しのもと
午前中は前日からのキーワードでもある「フォレストガーデン」を見学しました。まずは正晨寺の境内に作られたフォレストガーデンから。
お寺は法事をあげる場所というイメージが強いかもしれませんが、元々は地域コミュニティの核となる機能を有しています。自身だけでなく「お寺に来た人においしいものを摘んで楽しんで帰ってもらいたい」と僧侶の丸山さんは言います。また四季を通じて食べられる植物をふんだんに配したフォレストガーデンは、災害時など食物の流通が途絶えた時のリスク対応にもなります。人が集まりコミュニティの核となるお寺にこそ、フォレストガーデンの良さが活かされると思いました。お忙しい中、非常に丁寧な案内をしていただきありがとうございました。
次に向かったのは、耕作放置地を活用したフォレストガーデンの例です。ここは街中からほど近く、フォレストガーデンの一角から隣接する畑とその奥には住宅地が見えます。
フォレストガーデンを見慣れてくると、単一の野菜が整然と並んでいる農薬や化学肥料を使った一般的な日本の畑の方がむしろ不自然な状態に思えてきます。月1回活動の中で、フォレストガーデンの手入れだけでなく隣接する斜面の竹やぶや森林もきれいに整備されています。
パーマカルチャーの基本である【観察】する視点が芽生え出してからは「整備する感覚と視点が大きく変わった」と案内してくれた松浦さんは言います。
たくさん歩いてお腹の空いたところで、最後の訪問場所であるコミュニティカフェ「jimicen」に到着。オーナーの大村さんと金沢まおこさん(昨日フォレストガーデンを見せていただいた鴨家キッチンのオーナー)にお話を伺いました。
“コミュニティ”というと同じ考えや趣向をもつ人たちの集まりという傾向に陥りがちですが、浜松のトランジッションタウンの活動では、多種多様な人たちが意見を出し合いながらビジョンを描いて街づくりを目指しています。多様な価値観を持つ人が集まると時に衝突が起きることもあります。「〜ねばならない」とか「〜すべき」という心の動きが簡単に対立構造を生み出してしまいます。そこで大切な考え方が、活動するひとたちが持続可能であるための心のケア(心のシステムの理解)だそうです。
「jimicen」ではお互いのビジョンを尊重しつつ人や地球への負荷がミニマムになるように、実にさまざまな関係性を築きながらドリンクやランチを提供しています。
日本人は「お願いするのが苦手な人が多い」つまり、”貢献したがる民族”なんですね。需要と供給がアンバランス。貢献する人が活躍できるようするには、まずお願いする人を増やさないと成立しません。それで「やってもらう」ことを「やってあげる」より上位になるような関係性の仕組みを作ったそうです。
「Give&Want」でつながるボードや設備費や管理費のない簡易ショップをカフェ内に設置しています。使用料をとならないことで利用者の敷居を下げるかわりに、カフェを利用してもらうことでつながりが拡がります。現時点の利益という視点より未来のつながりをとても大切にされていると感じました。
2日間を通じてフォレストガーデンという持続可能な手法をキーに、浜松のパーマカルチャーとトランジションタウンの事例を一歩踏み込んで理解することができました。貴重な学びの場をコーディネートしてくださった庄司さん、浜松のみなさん、本当にありがとうございました。
報告:石川 麻衣子(森林環境教育専攻1年)
編集:新津 裕 (森林環境教育教員)