木材の応力波測定
名古屋大の山崎先生の研究室の方々がアカデミーにて、木材の応力波の測定実習に来られました。
応力波の測定によって、すでに建物に使用されている状態でも、木材のヤング率を測れます。
推定したヤング率から機械等級区分にしたがって各種設計強度を決定できるものです。
特に改修時などで見た目ではわかりにくい木材の様子が確認できるものです。山崎研究室では、寺社仏閣の古材なども計測して健全かどうかの判断に活用しているとか。
秋に開催したアカデミーの木造建築病理学でも、山崎先生から実際の計測写真などで(アカデミー学生は)学んでいましたが、実際に目にするのは初めてです。
以前から気になっていた、森の情報センターと森の工房の構造丸太の足元を計測してもらいました。
応力波速度測定器 FAKOPPという機材を用いて計測していきます。
この機材は、打ち込みセンサーを計測したい木材の2か所に打ち込み、片側のセンターに衝撃を与えて、発生するエネルギー(応力波)が反対側の受信用センサーに到達するまでの時間(μs)を測定するものです。
腐朽や欠損などがあると、それらを迂回して振動が伝わるため、到達時間が時間がかかるというわけです。つまり、距離が同じで到達時間が早ければ、健全である可能性が高いということ。
早速、情報センターの主要な丸太にセンサーを打ち込んで、山崎研究室の方々が効率的に計測を始めました。アカデミー学生も、病理学でスライドで見た計測ということで、一つにつながった模様。
今年の自力建設の丸太も計測しました。もちろん腐朽とは程遠い状態ですが、今の状態を計測し、記録を残しておくと今後の経年変化も確認できます。
こちらは当然、アカデミー学生が機材をセットします。今回はDボルトを埋め込んだ小口同士で計測しました。
記録用紙には、応力の伝播時間と計測長さを記載され、速度も計算しておきます。
その後、教室に戻り解析を行いヤング率などを求めていきます。
さて結果はというと、ヤング係数は、概ねE70~E110とスギとしては、まずまずの結果となりました。
また、丸太直径の対角線上に差して計測した結果から内部の空洞や腐朽を確認する計測も行いましたが、特異な数値は得られなかったため、健全ではないかと結論になりました。
名古屋大の山崎先生と院生の皆さま、ありがとうございました。
准教授 辻充孝