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2019年03月03日(日)

アカデミー教員がアメリカの工芸学校で講座を行います

教員の久津輪です。3月5日より15日までアメリカ・ミネソタ州のノースハウス工芸学校で、かつて石川県加賀市で作られていた「我谷盆(わがたぼん)」を作る講座を行います。

なぜアメリカで、石川県の工芸を、岐阜の木工教員が?と不思議に思われる方もいると思います。

私は人力の道具で生木を削る木工=グリーンウッドワークの研究や普及をする中で、この我谷盆に出会いました。このお盆はかつて石川県の我谷村というところでクリの屋根板を作る職人が冬の副業として作っていたお盆です。1960年代のダム建設に伴い村は水没し、作る人もいなくなってしまったのですが、京都の木工家、森口信一さんが復興させ制作に取り組んでいます。森林文化アカデミーでは、我谷盆を日本ならではのグリーンウッドワークと捉え、これまで森口さんを2度お招きして講座を行ってきました。

昨年3月、アメリカの著名な木工家、ジャロッド・ダールさんをアカデミーに招いて講座を行った際、この我谷盆を紹介して森口さんにも会っていただきました。ジャロッドさんは感激し、自身が運営委員を務めるミネソタ州のノースハウス工芸学校でぜひ講座をやりたい、と言って帰国しました。それからわずか1年のうちに予算を確保し、講座を企画して、今回の実施の運びとなりました。アメリカやヨーロッパの工芸家と付き合って感心するのはこの動きの良さ、手続きの早さです。膨大な書類のやりとりや組織内での複雑な手続きがほとんどないのです。

ノースハウス工芸学校は、アメリカでも有名な手工芸の学校と聞いています。もともと北欧からの移民が多い地区で、北欧の伝統である成人教育学校(folk school)を模して作られました。北欧やアメリカ先住民のさまざまな工芸を教える短期講座があります。今回の我谷盆講座は、スペシャルイベント「Wood Week」(木工週間)の1つとして実施します。私は森口さんの通訳兼アシスタントを務めます。

また、期間中に1時間のプレゼンテーションの機会を与えられており、私が「ゴッホの椅子と黒田辰秋」についてスライドを交えてお話しする予定です。黒田辰秋は我谷盆を見出したことでも知られるので、そのことも絡めながらお話しします。

このような工芸学校や木工のスペシャルイベントがどのように運営されているのかを見てくることが、私にとっての大きな目的です。帰国後は機会をつくって報告会を実施したいと思いますし、これからのイベント運営にも活かしたいと思っています。

久津輪 雅(木工・准教授)