木工事例調査「杣工房 早川泰輔事務所」中津川市連携事業
中津川市連携で行われた「木工事例調査」その見学レポート②を学生から報告いたします。
木工事例調査in中津川、2軒目に訪れたのは付知にあります「杣工房 早川泰輔事務所」です。
経年変化で深い味わいを醸し出す外観。1階を奥へ進んでいくと工房があり、代表の早川泰輔さんよりお話を伺いました。
早川さんの事務所では、主に木工と木造建築の2本柱でお仕事をされています。元々建築を学んでおられ、建築仕事の割合が高く、広葉樹を使った木造建築をつくっていらっしゃるそうです。アカデミーで森や木を学ぶ木工専攻の私たちにも興味深いお話でした。
もちろん建築のみならず、木工のお仕事もされています。早川さんのお父様、お祖父様もかつて木工家で、当時からお付き合いのあるお客様から、今なお家具の制作依頼などがあるようです。先代からのご縁もあり、さまざまなお仕事をいただいているとお話ししてくださいました。
幼少期から仕事場でお手伝いをし、日常的に木に触れ、馴染んできていた早川さんは、手道具の面白さについても教えてくださいました。場合によっては機械を使うよりも手っ取り早くてずっと良いんだ、と言われます。
そのお話の中で「木の仕事をするなら自分で木を担ぐべき」という言葉がとても心に響いています。自分で乾燥・製材をしてから木取りをしてものづくりをする、と話す早川さん。木工では木材を木取る時、無駄なくそして木の性質にならって木取っていくことが基本と言えます。しかしながら、いつでもこのセオリー通りが良いとは言えません。セオリーに加えて、木材それぞれの状態を自分で確かめて判断して木取ることが必要であると早川さんは仰います。歩留まりのことだけ考えるのではなく、木目や色味など、木の部分をどう活かすのかを考えること、そしてその理由がきちんと言えることが重要なのです。
また、私たち学生へ「普段から見て触れて、自分が関わった木がどんな木だったのかをよく覚えておくことが大切」とアドバイスをいただきました。自分で触ってみて加工してみて知識を得る、自分でやることで確信がもてるようになる、この積み上げこそがまさに「木を自分で担ぐ」ことであり、今の私たちにできる重要な作業なのだと感じました。
建築も木工も、木を扱うことは同じであり、そのふたつは融合していくともっと良いものづくりができるようになります。さらにアカデミーの木工専攻はものをつくる人だけでなく、伝えることを仕事にしていく人もいます。さまざまな人の活動を融合していくと、もっと面白いことができるかもしれません。さまざまな想いをもちながら木と向き合う私たち学生に、木と関わる仕事をしていく上で大事にするべきことを教えていただきました。早川さん、貴重なお話を本当にありがとうございました。
文責:森と木のクリエーター科 木工専攻2年
丹羽茄野子、畑山沙織、藤田真弓